秋分の俳句 -しゅうぶん-
9月の下旬に「秋分の日」を迎えると、いよいよ秋らしさを本格的に感じるようになってきます。
「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉のとおりに、暑い日もめっきり少なくなってゆき、秋の風物を存分に味わえる喜びに満ちてきます。
このページには、秋分に関する俳句を集めました。「秋彼岸」とは少し違う「秋分」特有の雰囲気を持った句ばかりですので、じっくりと味わってみてください。
目次
- 1 秋分の俳句
- 1.1 赤ん坊の 顱頂の雲垢や 秋分来
- 1.2 秋中日 鮎食ふ人を 集めけり
- 1.3 秋分の 牛生といふ町 潮ぐもり
- 1.4 秋分の 酒杯の微塵 親し恋し
- 1.5 秋分の 正午の日ざし 真向にす
- 1.6 秋分の ときどき雨や 荏のしづく
- 1.7 秋分の 灯すと暗く なっていし
- 1.8 秋分の 日の御仏と 枯れ給ふ
- 1.9 秋分の 日や広々と 机置く
- 1.10 秋分の 木造駅舎の 日章旗
- 1.11 秋分の 湯殿の岩を 踏みにけり
- 1.12 秋分へ 一候のころ 鳥たちの
- 1.13 秋分や 葉をみつみつの 翌檜
- 1.14 病者には 秋分もなし 臥るばかり
- 1.15 嶺聳ちて 秋分の闇に入る
- 1.16 山かがし 秋分の日の 草に浮く
- 1.17 陵守の 父に秋分の 餉がとどく
秋分の俳句
「秋中日」「秋分」「秋分の日」が詠み込まれた句を集め、俳句の文字の五十音順に並べました。
なお、これらは俳句において秋の季語として扱われます。
赤ん坊の 顱頂の雲垢や 秋分来
【作者】田川飛旅子(たがわ ひりょし)
【補足】顱頂(ろちょう)とは、頭のてっぺんのことです。「雲垢」の読み方は「ふけ(=頭垢)」です。句末の「来(カ行変格活用の終止形)」の読み方は「く」です。
秋中日 鮎食ふ人を 集めけり
【作者】長谷川かな女(はせがわ かなじょ)
【補足】中日(ちゅうにち)とは、彼岸(ひがん)の七日間の真ん中の日のことで、「秋分の日」と同じ日です。
【関連】 秋分の日とは?
秋分の 牛生といふ町 潮ぐもり
【作者】 阿部みどり女(あべ みどりじょ)
【補足】牛生町(ぎゅうちょう)は、宮城県塩竈市(しおがまし)にあります。潮ぐもりとは、海の潮の水気で空が曇ることをいいます。
秋分の 酒杯の微塵 親し恋し
【作者】原子公平(はらこ こうへい)
【補足】「微塵」の読み方は「みじん(=ごくわずかな量、微細なもの)」です。
秋分の 正午の日ざし 真向にす
【作者】菅 裸馬(すが らば)
【補足】「真向」の読み方は「まむき(=正面の意)」です。
秋分の ときどき雨や 荏のしづく
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
【補足】荏(え)は紫蘇(しそ)に似た植物で、食用または油を採るために栽培されます。
秋分の 灯すと暗く なっていし
【作者】池田澄子(いけだ すみこ)
【補足】「灯す」の読み方は「ともす」です。
秋分の 日の御仏と 枯れ給ふ
【作者】皆川白陀(みながわ はくだ)
【補足】御仏(みほとけ)とは、仏を敬っていう言葉です。
秋分の 日や広々と 机置く
【補足】神蔵 器(かみくら うつわ)
秋分の 木造駅舎の 日章旗
【作者】高澤良一(たかざわ よしかず)
【補足】日章旗(にっしょうき)とは日本の国旗のことで、「日の丸(ひのまる)」といわれることが多くみられます。
秋分の 湯殿の岩を 踏みにけり
【作者】佐藤鬼房(さとう おにふさ)
【補足】湯殿(ゆどの)とは、風呂場・浴室のことです。また、山形の湯殿山(ゆどのさん)は出羽三山(でわさんざん)のうちの一つです。
秋分へ 一候のころ 鳥たちの
【作者】豊田都峰(とよた とほう)
【補足】一候(いちこう)とは、二十四節気(にじゅうしせっき:一年を24に分けて季節の名前をつけたもの)の各一気(約15日間)をさらに一候、二候、三候と 3つに分けたものの最初の約 5日間のことで、初侯(しょこう)ということもああります。一年には七十二候があります。
秋分や 葉をみつみつの 翌檜
【作者】岸田稚魚(きしだ ちぎょ)
【補足】「葉をみつみつ」とは、葉が密集していることを表現していると解します。翌檜(あすなろ、あすなろう)は、ヒノキ科の常緑高木です。
病者には 秋分もなし 臥るばかり
【作者】角川源義(かどかわ げんよし)
【補足】「臥る」の読み方は「ねる」です。
嶺聳ちて 秋分の闇に入る
【作者】飯田龍太(いいだ りゅうた)
【補足】「嶺 聳ちて」の読み方は「みね そばだちて」で、「そばだつ(聳つ、峙つ)」とは「そびえる、山などが高く立つ」という意味です。
山かがし 秋分の日の 草に浮く
【作者】松村蒼石(まつむら そうせき)
【補足】山かがし(ヤマカガシ)は、有毒の蛇の名前です。
陵守の 父に秋分の 餉がとどく
【作者】松村蒼石
【補足】陵守(りょうもり)とは、皇族などの墓の守衛をする人のことです。餉(かて、かれい)は、食事や弁当などを意味します。
関 連 ペ ー ジ