台風の俳句 30選 -たいふう-
台風が近づいてくる夜に、次第に強くなってくる雨や風の音を聞いていると、気持ちも落ち着かずに不安になってきます。
しかし、朝になて目覚めたときに穏やかな青空が見られると、台風が去っていったことにほっとします。
このページには、「台風」「颱風」が詠まれた俳句の中から 30句を選びました。台風が来る前、台風の最中、台風が抜けた後の光景が目に浮かぶような作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 台風の俳句 30選
- 1.1 羅に 野の花を染め 颱風圏
- 1.2 衰へし 汝を颱風 とは呼ばず
- 1.3 傘立を 豆台風の もてあそび
- 1.4 雲際の 鳶に颱風 去る日かな
- 1.5 壺中にも 台風の余波 月見酒
- 1.6 このままに 颱風となり ゆくらしき
- 1.7 篠といふ 篠は総枯れ 台風禍
- 1.8 書を読むや 颱風の夜の 白き燈に
- 1.9 台風一過 髪の先まで 三つに編む
- 1.10 台風と 同じ旅路と なりしこと
- 1.11 台風と こほろぎ去年 より早し
- 1.12 颱風に 遅るる妻を 眼で手繰る
- 1.13 颱風に 傾くままや 瓢垣
- 1.14 颱風に 妻は痩身 飛ぶ飛ぶと
- 1.15 颱風に 濡れそぼつ妻 歩ましめ
- 1.16 颱風に 吹かれ吹かれつ 投函す
- 1.17 颱風に 吹きもまれつつ 橡は橡
- 1.18 颱風の あと黄昏の 寄り集ふ
- 1.19 颱風の あとや日光 正しくて
- 1.20 颱風の 雲しんしんと 月をつつむ
- 1.21 颱風の 来るてふ旅の 落つかず
- 1.22 颱風の ことを頭に 家を出る
- 1.23 颱風の さ中の闇の 仔猫たち
- 1.24 颱風の 篠つく雨に 息づけり
- 1.25 台風の 少しそれたる 雨となる
- 1.26 颱風の 空飛ぶ花や 百日紅
- 1.27 颱風の 名残りの風の 柳吹く
- 1.28 颱風の 名残の驟雨 あまたゝび
- 1.29 颱風の 庭に出たがる 子を叱る
- 1.30 颱風の のち日々しづか 秋桜
台風の俳句 30選
台風について詠まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
これらは、俳句において秋の季語とされます。
なお、明治の末頃から「颱風」という表現が使われはじめて、1950年代後半から「台風」と書かれるようになりました。
羅に 野の花を染め 颱風圏
【作者】三橋鷹女(みつはし たかじょ)
【補足】羅(うすもの)とは、風通しがよい薄い織物(おりもの)、また、それで作った和服のことをいいます。
衰へし 汝を颱風 とは呼ばず
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
【補足】汝(なんじ)は文語の二人称代名詞で、「おまえ」といった意味になります。
傘立を 豆台風の もてあそび
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【補足】豆台風(まめたいふう)とは、規模が小さい台風について用いられた名称で、現在では使用されることがほとんどなくなりました。
雲際の 鳶に颱風 去る日かな
【作者】原 石鼎(はら せきてい)
【補足】鳶(とび)はタカ科の鳥類です。
壺中にも 台風の余波 月見酒
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
【補足】「壺中」の読み方は「こちゅう」です。
このままに 颱風となり ゆくらしき
【作者】後藤夜半(ごとう やはん)
篠といふ 篠は総枯れ 台風禍
【作者】阿波野青畝
【補足】篠(しの)は竹の一種です。また、台風禍(たいふうか)とは、台風がもたらした災害のことをいいます。
書を読むや 颱風の夜の 白き燈に
【作者】山口誓子
【補足】「燈」は「灯」の旧字体で、読み方は「ひ」です。
台風一過 髪の先まで 三つに編む
【作者】西東三鬼(さいとう さんき)
【補足】台風一過(たいふういっか)とは、台風が通り過ぎた後に空が晴れ渡ることをいいます。
台風と 同じ旅路と なりしこと
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
台風と こほろぎ去年 より早し
【作者】百合山羽公
颱風に 遅るる妻を 眼で手繰る
【作者】山口誓子
【補足】「手繰る」の読み方は「たぐる(=自分の方に寄せるという意味)」です。
颱風に 傾くままや 瓢垣
【作者】杉田久女(すぎた ひさじょ)
【補足】「瓢(ひさご)」は、ヒョウタン・ユウガオ・トウガンなどの植物の総称です。
颱風に 妻は痩身 飛ぶ飛ぶと
【作者】山口誓子
【補足】痩身(そうしん)とは、やせている身体のことをいいます。
颱風に 濡れそぼつ妻 歩ましめ
【作者】山口誓子
【補足】「濡れそぼつ」とは、雫(しずく)がしたたるほどに濡れることを表現する言葉です。「歩ましめ」は「歩かせ」の意味です。
颱風に 吹かれ吹かれつ 投函す
【作者】石田波郷(いしだ はきょう)
【補足】「投函」の読み方は「とうかん」です。
颱風に 吹きもまれつつ 橡は橡
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
【補足】橡(とち)は、トチノキ科の落葉高木です。
颱風の あと黄昏の 寄り集ふ
【作者】山口誓子
【補足】黄昏(たそがれ)とは、夕方・夕暮れのことです。
颱風の あとや日光 正しくて
【作者】山口誓子
颱風の 雲しんしんと 月をつつむ
【作者】大野林火(おおの りんか)
颱風の 来るてふ旅の 落つかず
【作者】高浜年尾
【補足】「~てふ」は「~という」の意味です。
颱風の ことを頭に 家を出る
【作者】波多野爽波(はたの そうは)
颱風の さ中の闇の 仔猫たち
【作者】飯田龍太(いいだ りゅうた)
【補足】「さ中(さなか)」は「さいちゅう(=物事の盛んな期間)」の意味です。「仔猫」の読み方は「こねこ」です。
颱風の 篠つく雨に 息づけり
【作者】西島麦南(にしじま ばくなん)
【補足】「篠つく雨」とは、激しい勢いで降る雨のことをいいます。
台風の 少しそれたる 雨となる
【作者】稲畑汀子
颱風の 空飛ぶ花や 百日紅
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
【補足】百日紅(さるすべり)は、ミソハギ科の落葉高木です。
颱風の 名残りの風の 柳吹く
【作者】高野素十(たかの すじゅう)
颱風の 名残の驟雨 あまたゝび
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】驟雨(しゅうう)とは、急に降りだす雨、にわか雨のことです。
颱風の 庭に出たがる 子を叱る
【作者】稲畑汀子
颱風の のち日々しづか 秋桜
【作者】山口青邨
【補足】秋桜(あきざくら)は、コスモスのことです。
秋桜の花
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