団扇の俳句 30選 -うちわ-
暑苦しい夏の日に、手軽にあおいで涼しさが得られる団扇は、私たちにとって馴染みの深いものです。
この「団扇」は俳句において夏の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「団扇」が詠まれた俳句を多く集めました。いかにも夏らしい雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 団扇の俳句 30選
- 1.1 あれこれと つかうて左右の 団扇かな
- 1.2 家にして 団扇づかひの 日も稀や
- 1.3 団扇絵の 写楽の風に 負けてをり
- 1.4 団扇にて 古びし涼を 納れにけり
- 1.5 団扇の柄 なめるを乳の かはり哉
- 1.6 うつくしき 団扇持ちけり 未亡人
- 1.7 優曇華の 附きし団扇を 大切に
- 1.8 売れのこる 残暑の店の 団扇哉
- 1.9 枝豆を うけとるものや 渋団扇
- 1.10 殺されるために出を待つ 団扇かな
- 1.11 さし招く 団扇の情に したがひぬ
- 1.12 桟橋に 出て夕凪の 団扇かな
- 1.13 暫くは 暑き風来る 団扇かな
- 1.14 扇風機 かけてふはつく 団扇あり
- 1.15 そこらまで 団扇片手に 送り出し
- 1.16 七夕や 宵の畳の 白団扇
- 1.17 中元の いつもの画なる 団扇かな
- 1.18 手すさびに よごす団扇の 緋房かな
- 1.19 とりいでて 団扇も去年の 匂ひかな
- 1.20 南方の 赤き団扇を 使はれよ
- 1.21 俳人の 団扇歌人の 扇かな
- 1.22 母親に 夏やせかくす 団扇かな
- 1.23 晩涼や 赤い団扇を 腰にさし
- 1.24 病牀に しろき団扇を 好みけり
- 1.25 仏壇に 尻を向けたる 団扇かな
- 1.26 古畳 団扇に虫を おさへけり
- 1.27 へなへなに こしのぬけたる 団扇かな
- 1.28 まだ団扇 すゝめるほどもなく置かれ
- 1.29 乱れたる 団扇かさねて 泊りけり
- 1.30 山寺に うき世の団扇 見ゆるかな
団扇の俳句 30選
「団扇」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞ください。
あれこれと つかうて左右の 団扇かな
【作者】鈴木花蓑(すずき はなみの)
家にして 団扇づかひの 日も稀や
【作者】木村蕪城(きむら ぶじょう)
【補足】「稀」の読み方は「まれ」です。
団扇絵の 写楽の風に 負けてをり
【作者】河野南畦(こうの なんけい)
【補足】東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)は、江戸時代後期の浮世絵師です。
団扇にて 古びし涼を 納れにけり
【作者】相生垣瓜人(あいおいがき かじん)
【補足】「納れにけり」の読み方は「いれにけり」です。
団扇の柄 なめるを乳の かはり哉
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【補足】句末の「哉(かな)」は、詠嘆の意を表します。
うつくしき 団扇持ちけり 未亡人
【作者】小林一茶
優曇華の 附きし団扇を 大切に
【作者】石田波郷(いしだ はきょう)
【補足】優曇華(うどんげ)は、クワ科イチジク属の落葉高木です。また、3000年に一度花が咲くという伝説上の植物を指すこともあります。
売れのこる 残暑の店の 団扇哉
【作者】会津八一(あいづ やいち)
枝豆を うけとるものや 渋団扇
【作者】芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
【補足】澁団扇(しぶうちわ)とは、柿の渋(しぶ)を塗った団扇のことをいいます。
殺されるために出を待つ 団扇かな
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
さし招く 団扇の情に したがひぬ
【作者】後藤夜半(ごとう やはん)
【補足】「したがひぬ」は「したがった」という完了の意味です。
桟橋に 出て夕凪の 団扇かな
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
【補足】「桟橋」の読み方は「さんばし」です。夕凪(ゆうなぎ)とは、夕方に波風が静まることをいいます。
暫くは 暑き風来る 団扇かな
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
【補足】「暫くは」の読み方は「しばらくは」です。
扇風機 かけてふはつく 団扇あり
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
そこらまで 団扇片手に 送り出し
【作者】今井つる女(いまい つるじょ)
七夕や 宵の畳の 白団扇
【作者】大谷碧雲居(おおたに へきうんきょ)
【補足】宵(よい)とは、日が暮れてからしばらくの間のことをいいます。
中元の いつもの画なる 団扇かな
【作者】水原秋桜子
【補足】中元(ちゅうげん)とは、旧暦 7月15日のことで、この頃に世話になった人などに品物を贈ること、また、その物をいいます。
手すさびに よごす団扇の 緋房かな
【作者】高橋淡路女(たかはし あわじじょ)
【補足】手すさびとは、手先で何気なく気晴らしでする遊びのことをいいます。
とりいでて 団扇も去年の 匂ひかな
【作者】吉武月二郎(よしたけ つきじろう)
南方の 赤き団扇を 使はれよ
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
俳人の 団扇歌人の 扇かな
【作者】会津八一
母親に 夏やせかくす 団扇かな
【作者】正岡子規(まさおか しき)
晩涼や 赤い団扇を 腰にさし
【作者】野村泊月(のむら はくげつ)
【補足】晩涼(ばんりょう)とは、夕方の涼しさのことをいいます。
病牀に しろき団扇を 好みけり
【作者】高橋淡路女
【補足】「病牀」の読み方は「びょうしょう(=病床)」です。
仏壇に 尻を向けたる 団扇かな
【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)
古畳 団扇に虫を おさへけり
【作者】正岡子規
へなへなに こしのぬけたる 団扇かな
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
まだ団扇 すゝめるほどもなく置かれ
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
乱れたる 団扇かさねて 泊りけり
【作者】長谷川かな女(はせがわ ていじょ)
【補足】「泊りけり」の読み方は「とまりけり」です。
山寺に うき世の団扇 見ゆるかな
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
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