雪解けの俳句 30選 -ゆきどけ、ゆきげ-
寒い冬が終わりを迎え、日に日に春らしくなってくると、それまで残っていた雪も解け始めます。
小林一茶の「雪解けて 村一ぱいの 子ども哉」という有名な句もあるように、雪解けは数多くの俳句に詠み込まれてきました。
このページには、そのような雪解けが詠まれた俳句の中から 30句を選びました。冬から本格的な春へと移り変わってゆく雰囲気が感じられるものばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 雪解けの俳句 30
- 1.1 あかあかと 白樺を透く 雪解川
- 1.2 浅草の 茶の木ばたけの 雪解かな
- 1.3 一片の 笹の遮る 雪解水
- 1.4 梅干の 瓶あらひけり 雪解川
- 1.5 かかる日は 一人に及かず 雪解音
- 1.6 鴎とび 雪解濁りの 運河かな
- 1.7 かんばしく 水車粉をひき 村雪解
- 1.8 雲一つ なくてまばゆき 雪解かな
- 1.9 恋人と 書院に語る 雪解かな
- 1.10 坂ありて 吹き下しくる 雪解風
- 1.11 白雲や 雪解の澤へ うつる空
- 1.12 全山の 雪解水富士 下りゆく
- 1.13 竹を伐る 人にやむなし 雪解雨
- 1.14 天日の 峰にまぶしく 雪解かな
- 1.15 にぎはしき 雪解雫の 伽藍かな
- 1.16 はしための かもじ干したる 雪解かな
- 1.17 八方に 雪解の音や 火吹竹
- 1.18 踏つけし 雪解にけり 深山寺
- 1.19 冬晴や 雪解けてゐる 音羽山
- 1.20 溝川に 芹の根あらふ 雪解水
- 1.21 雪解風 連翹黄を 発しけり
- 1.22 雪解川 名山けづる 響かな
- 1.23 雪解水 光琳笹に 奏でをり
- 1.24 雪解くる 漏に笛吹く 天女かな
- 1.25 雪解けて 雪踏の音の 嬉しさよ
- 1.26 雪解けの 音になじみて 菜を洗ふ
- 1.27 雪解の 峠の茶屋の 戸口かな
- 1.28 雪解や 赤が赫く 雉子の顔
- 1.29 雪解や 貧乏町の 痩子達
- 1.30 四方の戸の がた~鳴りて 雪解風
雪解けの俳句 30
「雪解け(ゆきどけ)」「雪解(ゆきげ)」「雪解風」「雪解雨」「雪解雫」などが詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
俳句において、これらは冬の季語として扱われます。
なお、一般的には「雪解け(ゆきどけ)」は「雪融け」、「雪解(ゆきげ=雪解けと同義)」は「雪消」とも表記されます。
あかあかと 白樺を透く 雪解川
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
【補足】「あかあかと(明々と)」は、とても明るい様子を表現する言葉です。
浅草の 茶の木ばたけの 雪解かな
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
【補足】浅草(あさくさ)は東京の地名で、『吾妻鏡(あづまかがみ=鎌倉時代に成立した歴史書)』にも記載が確認できます。
一片の 笹の遮る 雪解水
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
【補足】「遮る」の読み方は「さえぎる」です。
梅干の 瓶あらひけり 雪解川
【作者】会津八一(あいづ やいち)
【補足】「瓶」の読み方は「びん」です。
かかる日は 一人に及かず 雪解音
【作者】鈴木真砂女(すずき まさごじょ)
【補足】「かかる」は「こういう、こんな」を意味します。「及かず」は「及ばない、越したことがない」という意味です。
鴎とび 雪解濁りの 運河かな
【作者】高浜年尾(たかはま としお)
【補足】「鴎」の読み方は「かもめ」です。
かんばしく 水車粉をひき 村雪解
【作者】皆吉爽雨(みなよし そうう)
【補足】「かんばしく(芳しく)」は「こうばしく(香ばしく)」と同義です。
雲一つ なくてまばゆき 雪解かな
【作者】久保田万太郎
恋人と 書院に語る 雪解かな
【作者】泉 鏡花(いずみ きょうか)
【補足】書院(しょいん)とは書斎(しょさい)のことです。
坂ありて 吹き下しくる 雪解風
【作者】波多野爽波(はたの そうは)
白雲や 雪解の澤へ うつる空
【作者】炭 太祗(たん たいぎ)
【補足】「白雲」の読み方は「しらくも」です。「澤」は「沢」の旧字体です。
全山の 雪解水富士 下りゆく
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
【補足】全山(ぜんざん)とは、その山全体のことを意味します。
竹を伐る 人にやむなし 雪解雨
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
【補足】「伐る」の読み方は「きる」です。
天日の 峰にまぶしく 雪解かな
【作者】松瀬青々(まつせ せいせい)
【補足】天日(てんじつ)とは、太陽、太陽の光のことをいいます。
にぎはしき 雪解雫の 伽藍かな
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【補足】伽藍(がらん)とは、寺院の建物のことです。
はしための かもじ干したる 雪解かな
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】「はしため(端女)」とは、女中、召使いのことです。「かもじ(髢)」は、女性が髪に添え加える「入れ髪」です。
八方に 雪解の音や 火吹竹
【作者】三橋鷹女(みつはし たかじょ)
【補足】火吹竹(ひふきだけ)とは、吹いて火をおこすための、先に穴があいた竹筒のことです。
踏つけし 雪解にけり 深山寺
【作者】炭 太祇
冬晴や 雪解けてゐる 音羽山
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】京都の音羽山(おとわやま)は、古くから歌枕(うたまくら)として多くの和歌に詠まれてきました。
溝川に 芹の根あらふ 雪解水
【作者】中 勘助(なか かんすけ)
【補足】「芹」の読み方は「せり」です。
雪解風 連翹黄を 発しけり
【作者】久保田万太郎
【補足】連翹(れんぎょう)はモクセイ科の落葉低木で、早春に黄色い花が開きます。
雪解川 名山けづる 響かな
【作者】前田普羅
雪解水 光琳笹に 奏でをり
【作者】富安風生
【補足】光琳笹(こうりんざさ)とは、料理をのせる竹の皮で、金箔が施されたものです。「奏で」の読み方は「かなで」です。
雪解くる 漏に笛吹く 天女かな
【作者】阿波野青畝
【補足】漏(ろう)とは、煩悩(ぼんのう)のことです。
雪解けて 雪踏の音の 嬉しさよ
【作者】正岡子規
【補足】「雪踏」の読み方は「せった(=雪駄:ぞうりの底に皮をはった履き物)」です。
雪解けの 音になじみて 菜を洗ふ
【作者】及川 貞(おいかわ てい)
雪解の 峠の茶屋の 戸口かな
【作者】原 石鼎(はら せきてい)
雪解や 赤が赫く 雉子の顔
【作者】野村喜舟(のむら きしゅう)
【補足】「赫く」の読み方は「かがやく」です。
雪解や 貧乏町の 痩子達
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【補足】「痩子」の読み方は「やせご」です。
四方の戸の がた~鳴りて 雪解風
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】「四方」の読み方は「よも」です。
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