「行く年」の俳句 30選 -ゆくとし-
年の暮れの押し迫った感じ、年が過ぎ去ってゆく感じを「行く年」という言葉で表現することがあります。
この「行く年」は俳句において冬の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「行く年」が詠まれた俳句を多く集めました。いよいよ今年も終わろうかという雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 「行く年」の俳句 30選
- 1.1 年歩む 洗ひし門の したたりに
- 1.2 年行くか 音のみの波 闇に聞く
- 1.3 年行くと 故郷さして 急ぎ足
- 1.4 年行くと 満天の星 またたける
- 1.5 年行く夜 並び寝る子に われも寝る
- 1.6 行く年に 引っ立てられて 行く如し
- 1.7 行く年に 憫笑さるるごとく居り
- 1.8 ゆく年の 没り日も月も まろかつし
- 1.9 行く年の 後ろに就いて 行きにけり
- 1.10 ゆく年の 硯を洗ふ 厨かな
- 1.11 行く年の 空の隙さへ いそがしき
- 1.12 ゆく年の 月なり真夜も 明るきは
- 1.13 行く年の 墓ほのぼのと 洗はれし
- 1.14 ゆく年の ひかりそめたる星仰ぐ
- 1.15 ゆく年の 火のいきいきと 子を照らす
- 1.16 ゆく年の 水にうつる灯ばかりかな
- 1.17 行く年の 雪五六尺 つもりけり
- 1.18 行く年も 風と共にぞ 去らむずる
- 1.19 行く年や 石にくひつく 牡蠣の殼
- 1.20 行く年や 老を誉めたる 小町の絵
- 1.21 ゆく年や 狐のかけし よだれかけ
- 1.22 ゆく年や しきりに岸へ いどむ波
- 1.23 ゆく年や 書架に撤する 美酒一壺
- 1.24 ゆく年や 蕎麦にかけたる 海苔の艶
- 1.25 行く年や 束ね燃やせし 古手紙
- 1.26 行く年や 猫うづくまる 膝の上
- 1.27 行く年や 膝と膝とを つき合せ
- 1.28 行く年や 人々かへるところあり
- 1.29 行く年や 冥土の花の うつる水
- 1.30 行としや もどかしきもの 水ばかり
「行く年」の俳句 30選
「行く年」「年行く」「年歩む」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうそ。ごゆっくりとご鑑賞下さい。
年歩む 洗ひし門の したたりに
【作者】皆吉爽雨(みなよし そうう)
年行くか 音のみの波 闇に聞く
【作者】及川 貞(おいかわ てい)
年行くと 故郷さして 急ぎ足
【作者】正岡子規(まさおか しき)
年行くと 満天の星 またたける
【作者】福田蓼汀(ふくだ りょうてい)
【補足】「またたく(瞬く)」とは、星などがちらちらすることをいいます。
年行く夜 並び寝る子に われも寝る
【作者】及川 貞
行く年に 引っ立てられて 行く如し
【作者】相生垣瓜人(あいおいがき かじん)
【補足】「如し」の読み方は「ごとし」です。
行く年に 憫笑さるるごとく居り
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
【補足】憫笑(びんしょう)とは、あわれみわらうことです。
ゆく年の 没り日も月も まろかつし
【作者】皆吉爽雨
【補足】「没り日(いりひ=入り日)」とは、夕方に西に沈もうとする太陽のことをいいます。
行く年の 後ろに就いて 行きにけり
【作者】相生垣瓜人
【補足】「就いて」の読み方は「ついて」です。
ゆく年の 硯を洗ふ 厨かな
【作者】三好達治(みよし たつじ)
【補足】「硯」の読み方は「すずり」です。厨(くりや)とは、食べ物を調理する所、台所のことをいいます。
行く年の 空の隙さへ いそがしき
【作者】上島鬼貫(うえじま おにつら)
ゆく年の 月なり真夜も 明るきは
【作者】及川 貞
【補足】真夜(まよ)とは、夜中、真夜中のことをいいます。
行く年の 墓ほのぼのと 洗はれし
【作者】大野林火(おおの りんか)
ゆく年の ひかりそめたる星仰ぐ
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
【補足】「ひかりそめたる)」は「光り初めた」という意味です。
ゆく年の 火のいきいきと 子を照らす
【作者】飯田龍太(いいだ りゅうた)
ゆく年の 水にうつる灯ばかりかな
【作者】久保田万太郎
行く年の 雪五六尺 つもりけり
【作者】正岡子規
【補足】五六尺(ごろくしゃく)は、約 1.5~ 1.8 メートルです。
行く年も 風と共にぞ 去らむずる
【作者】相生垣瓜人
行く年や 石にくひつく 牡蠣の殼
【作者】正岡子規
【補足】「牡蠣」の読み方は「かき」です。
行く年や 老を誉めたる 小町の絵
【作者】斯波園女(しば そのめ)
ゆく年や 狐のかけし よだれかけ
【作者】久保田万太郎
ゆく年や しきりに岸へ いどむ波
【作者】久保田万太郎
ゆく年や 書架に撤する 美酒一壺
【作者】会津八一(あいづ やいち)
【補足】書架(しょか)とは、書棚、本棚のことです。「一壺」の読み方は「いっこ、ひとつぼ」です。
ゆく年や 蕎麦にかけたる 海苔の艶
【読み】ゆくとしや そばにかけたる のりのつや
【作者】久保田万太郎
行く年や 束ね燃やせし 古手紙
【作者】村山故郷(むらやま こきょう)
行く年や 猫うづくまる 膝の上
【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)
行く年や 膝と膝とを つき合せ
【作者】夏目漱石
行く年や 人々かへるところあり
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
行く年や 冥土の花の うつる水
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
【補足】冥土(めいど=冥途)とは、死者の霊魂が行くとされる世界のことです。
行としや もどかしきもの 水ばかり
【作者】加賀千代女(かがのちよじょ)
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