3月の俳句 30選 【有名俳人の名作から厳選】
3月の半ばを過ぎると寒さも少し和らいできて、わずかながらに暖かさが感じられることもあります。そして、ゆっくりながらも少しずつ春に向かっているのが実感できます。
このページには、そのような冬から春へと季節が移ってゆく 3月に関した「3月の俳句」といえるようなものを集めました。
3月ならではといえる風物が詠まれた句を、是非ともチェックしてみて下さい。
目次
- 1 3月の俳句について
- 2 3月の俳句 30選
- 2.1 尼寺や 彼岸桜は 散りやすき
- 2.2 薄赤き 顔並びけり 桃の酒
- 2.3 飾りたる 小町雛の うれひ眉
- 2.4 風晴れて 夕となりし 彼岸かな
- 2.5 京言葉 大阪言葉 濃白酒
- 2.6 啓蟄や たゞ一疋の 青蛙
- 2.7 三月の 息の白さの 山あそび
- 2.8 三月の産屋障子を 継貼りす
- 2.9 三月の 枯野を見たる 旅一歩
- 2.10 三月の 声のかかりし 明るさよ
- 2.11 三月の 雑誌の上の 日影かな
- 2.12 三月の たばしる霰 見つつ臥す
- 2.13 三月の 膝やはらかき 墓参り
- 2.14 三月の また門前の 雪の畦
- 2.15 三月の 雪わが傘を 白くせり
- 2.16 三月は 曲りくねりし 松の枝
- 2.17 三月や 茜さしたる 萱の山
- 2.18 三月や 月をわすれし 木々の枝
- 2.19 珠数ひろふ 人や彼岸の 天王寺
- 2.20 寺の灯も なべて春めく 宵なれや
- 2.21 鳶ついと 社日の肴 領しけり
- 2.22 初雷や ものに驚く 病み上がり
- 2.23 春雨の 音がしてくる 楽しさよ
- 2.24 春の雪 今本降りや 美しや
- 2.25 雛祭る 都はづれや 桃の月
- 2.26 水とりや 氷の僧の 沓の音
- 2.27 水ぬるむ 頃や女の わたし守
- 2.28 山の日の きらきら落ちぬ 春の川
- 2.29 雪どけの 音聞て居る 朝寝哉
- 2.30 夜明けから 雀が鳴いて 暖かき
3月の俳句について
現代の暦(新暦)の 3月の行事や風物が詠まれている句を集めました。
俳句の季語の季節感は旧暦によるものであり、ここに集めた句の季語は「春」のものとなっています。
3月の俳句 30選
尼寺や 彼岸桜は 散りやすき
【季語】彼岸桜(ひがんざくら)
【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)
【補足】彼岸桜は他の桜よりも開花が早く、彼岸の頃に咲くことから名付けられたといわれています。小彼岸(こひがん)、小彼岸桜(こひがんざくら)とも呼ばれています。
薄赤き 顔並びけり 桃の酒
【季語】桃の酒
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】桃の花を酒に浸したものを桃の酒といい、桃の節句にこれを飲むと百病が除かれるといわれています。
【関連】 ひな祭りの俳句
飾りたる 小町雛の うれひ眉
【季語】小町雛
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
【補足】雛飾りによっては、三歌人(=柿本人麻呂、小野小町、菅原道真)や三賢女(さんけんじょ=小野小町、清少納言、紫式部)が含まれます。
風晴れて 夕となりし 彼岸かな
【季語】彼岸
【作者】原 石鼎(はら せきてい)
【関連】 お彼岸の俳句
京言葉 大阪言葉 濃白酒
【季語】濃白酒
【作者】松本たかし(まつもと たかし)
【補足】白酒(しろざけ)がひな祭りのお供えとされるようになったのは、江戸時代になってからのことです。
啓蟄や たゞ一疋の 青蛙
【季語】啓蟄(けいちつ)
【作者】原 石鼎
【補足】啓蟄は二十四節気の一つで、冬眠していた虫たちが地上へ出てくる頃のことをいいます。
【関連】 啓蟄の俳句
三月の 息の白さの 山あそび
【作者】岡本 眸(おかもと ひとみ)
三月の産屋障子を 継貼りす
【作者】石田波郷(いしだ はきょう)
【補足】産屋(うぶや)とは、出産のために使う部屋のことです。
三月の 枯野を見たる 旅一歩
【作者】能村登四郎(のむら としろう)
三月の 声のかかりし 明るさよ
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
三月の 雑誌の上の 日影かな
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
三月の たばしる霰 見つつ臥す
【作者】野見山朱鳥(のみやま あすか)
【補足】「たばしる(=ほとばしる)」とは、激しい勢いで走り飛ぶことをいいます。「霰」の読み方は「あられ」です。
三月の 膝やはらかき 墓参り
【作者】飯田龍太(いいだ りゅうた)
三月の また門前の 雪の畦
【作者】高野素十(たかの すじゅう)
【補足】「畦」の読み方は「あぜ」です。
三月の 雪わが傘を 白くせり
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
三月は 曲りくねりし 松の枝
【作者】桂 信子(かつら のぶこ)
三月や 茜さしたる 萱の山
【季語】三月
【作者】芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
【補足】「茜(あかね)さしたる」とは、「茜色に照りはえている」という意味です。萱(かや=茅)は、屋根を葺くのに用いる草本の総称で、チガヤ・スゲ・ススキなどのことをいいます。
三月や 月をわすれし 木々の枝
【季語】三月
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
珠数ひろふ 人や彼岸の 天王寺
【季語】彼岸
【作者】正岡子規
【補足】「珠数」は「じゅず」と読みます。
寺の灯も なべて春めく 宵なれや
【季語】春めく
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【関連】 「春めく」の俳句
鳶ついと 社日の肴 領しけり
【読み】とびついと しゃにちのさかな りょうしけり
【季語】社日
【作者】三宅嘯山(みやけ しょうざん)
【補足】社日とは雑節(ざっせつ=季節の区分け)の一つで、春と秋に 2回あります。「領(りょう)する」とは、手に入れる、自分のものとすることを意味します。
初雷や ものに驚く 病み上がり
【季語】初雷(はつらい)
【作者】正岡子規
【補足】初雷とは立春(りっしゅん)以後の初めての雷のことで、音に驚いた虫が穴から出てくることから虫出しの雷とも呼ばれます。
春雨の 音がしてくる 楽しさよ
【季語】春雨
【作者】山口青邨
【句集】雑草園(昭和 9年)
【関連】 春雨の俳句
春の雪 今本降りや 美しや
【季語】春の雪
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
【関連】 春の雪の俳句
雛祭る 都はづれや 桃の月
【季語】雛祭る
【作者】与謝蕪村(よさ ぶそん)
水とりや 氷の僧の 沓の音
【季語】水とり
【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)
【補足】お水取りとは、奈良の東大寺二月堂(とうだいじにがつどう)で行われる行事で、閼伽井屋(あかいや)の香水を汲むものです。
水ぬるむ 頃や女の わたし守
【季語】水ぬるむ
【作者】与謝蕪村
山の日の きらきら落ちぬ 春の川
【季語】春の川
【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)
雪どけの 音聞て居る 朝寝哉
【季語】雪どけ
【作者】高井几董(たかい きとう)
【関連】 雪解けの俳句
夜明けから 雀が鳴いて 暖かき
【季語】暖かき
【作者】臼田亞浪(うすだ あろう)
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