冬薔薇の俳句 30選 -ふゆそうび、ふゆばら-
冬に咲く薔薇のことを「冬薔薇」という言葉で表現することがあります。
この「冬薔薇」は俳句において冬の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「冬薔薇」「冬の薔薇」「寒薔薇」が詠まれた俳句を集めました。厳しい寒さの中で咲く薔薇の姿が目に浮かんでくるような作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 冬薔薇の俳句 30選
- 1.1 朝なれば 食器の音も 冬の薔薇
- 1.2 あま照らす 日のしたゝりに 寒薔薇
- 1.3 一疋の 雄の夜明けぬ 冬薔薇
- 1.4 菊枯れて 冬薔薇蕾む 小庭かな
- 1.5 銀座には 銀座の生活 冬薔薇
- 1.6 婚約を 心に許す 冬薔薇
- 1.7 さし溢す 水珠なせり 寒薔薇
- 1.8 咲きかはり 枝をかへたる 冬薔薇
- 1.9 咲きなやむ 冬薔薇の香の きこえけり
- 1.10 散るまへの 光にゆだね 冬薔薇
- 1.11 札所にも 咲けば似合ひて 冬薔薇
- 1.12 冬薔薇 石の天使に 石の羽根
- 1.13 冬薔薇 一輪風に 揉まれをり
- 1.14 冬薔薇 咲くや海越え来し吾子に
- 1.15 冬の薔薇 すさまじきまで 向うむき
- 1.16 冬の薔薇 日々事なきは つまらなく
- 1.17 冬ばらに 落葉乏しく なりにけり
- 1.18 冬薔薇に かならず人の 遠くより
- 1.19 冬ばらに 華美な下着や 椅子の客
- 1.20 冬ばらに 静夜明けゆく 聖母の図
- 1.21 冬薔薇に 名づけて真珠日和かな
- 1.22 冬薔薇の 花弁の渇き 神学校
- 1.23 冬薔薇の 咲いてしをれて 人遠き
- 1.24 冬薔薇の 咲くほかはなく 咲きにけり
- 1.25 冬ばらの 真紅に未来 うるほへり
- 1.26 冬薔薇は 色濃く影の 淡きかも
- 1.27 冬薔薇や 仕事で逢ひて 好きな人
- 1.28 冬ばらや 父に愛され 子に愛され
- 1.29 文芸は 具象抽象 冬の薔薇
- 1.30 無名氏の 薔薇咲かせたり 冬の木戸
冬薔薇の俳句 30選
「冬薔薇」「冬の薔薇」「寒薔薇」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
なお、漢字の「薔薇」は、「ばら」「そうび」「しょうび」と読まれます。
どうそ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
朝なれば 食器の音も 冬の薔薇
【作者】細見綾子(ほそみ あやこ)
あま照らす 日のしたゝりに 寒薔薇
【作者】西島麦南(にしじま ばくなん)
【補足】「あま照らす」とは、「天に光り輝いていらっしゃる、天下を治めておいでになる」という意味です。
一疋の 雄の夜明けぬ 冬薔薇
【作者】石塚友二(いしづか ともじ)
【補足】「疋」の読み方は「ひき(=匹)」です。
菊枯れて 冬薔薇蕾む 小庭かな
【作者】正岡子規(まさおか しき)
銀座には 銀座の生活 冬薔薇
【作者】高木晴子(たかぎ はるこ)
婚約を 心に許す 冬薔薇
【作者】羽部洞然(はぶ どうねん)
さし溢す 水珠なせり 寒薔薇
【読み】さしこぼす みずたまなせり かんそうび
【作者】西島麦南
【補足】句頭の「さし」は、動詞について語勢を強めたり、あるいは調える接頭語です。
咲きかはり 枝をかへたる 冬薔薇
【作者】高浜年尾(たかはま としお)
咲きなやむ 冬薔薇の香の きこえけり
【作者】西島麦南
散るまへの 光にゆだね 冬薔薇
【作者】鍵和田釉子(かぎわだ ゆうこ)
札所にも 咲けば似合ひて 冬薔薇
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
【補足】札所(ふだしょ)とは、三十三か所の観音や八十八か所の大師などの霊場(れいじょう=神仏の霊験があらたかな場所)のことをいいます。また、参詣者が参詣のしるしとして札を受け取る所を意味することもあります。
冬薔薇 石の天使に 石の羽根
【作者】中村草田男(なかむら くさたお)
冬薔薇 一輪風に 揉まれをり
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
冬薔薇 咲くや海越え来し吾子に
【作者】羽部洞然
【補足】吾子(あこ)とは、「わが子」を意味します。
冬の薔薇 すさまじきまで 向うむき
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
冬の薔薇 日々事なきは つまらなく
【作者】鈴木真砂女(すずき まさじょ)
冬ばらに 落葉乏しく なりにけり
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
冬薔薇に かならず人の 遠くより
【作者】古舘曹人(ふるたち そうじん)
冬ばらに 華美な下着や 椅子の客
【作者】阿部みどり女
【補足】華美(かび)とは、はなやかで美しいこと、はでやかなことを意味します。「椅子」の読み方は「いす」です。
冬ばらに 静夜明けゆく 聖母の図
【作者】柴田白葉女(しばた はくようじょ)
【補足】静夜(せいや)とは、静かな夜のことをいいます。聖母(せいぼ)は、聖人の生母、イエスの母マリアを意味します。
冬薔薇に 名づけて真珠日和かな
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
【補足】「真珠日和」の読み方は「しんじゅびより」です。
冬薔薇の 花弁の渇き 神学校
【作者】上田五千石(うえだ ごせんごく)
【補足】神学校(しんがっこう)とは、キリスト教神学の研究と、教職者・教会奉仕者の養成とを行う学校のことです。
冬薔薇の 咲いてしをれて 人遠き
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
冬薔薇の 咲くほかはなく 咲きにけり
【作者】日野草城
冬ばらの 真紅に未来 うるほへり
【作者】柴田白葉女
冬薔薇は 色濃く影の 淡きかも
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
冬薔薇や 仕事で逢ひて 好きな人
【作者】岡本 眸(おかもと ひとみ)
冬ばらや 父に愛され 子に愛され
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
文芸は 具象抽象 冬の薔薇
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【補足】具象(ぐしょう)とは、形をとって現れること、また、その形のことで、「抽象(ちゅうしょう)」はその対義語です。
無名氏の 薔薇咲かせたり 冬の木戸
【作者】石塚友二
【補足】無名氏(むめいし)とは、名前の分からない人のことをいいます。
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