花筏(ハナイカダ)とは? 意味が 2つあるのですか?
あなたは、花筏(はないかだ)という言葉を聞いたことがありますか?
この言葉は、なんとも美しい響きを持っていて、とても日本らしい印象を受けます。耳にしただけでも情景が浮かんでくるような、とても素晴らしい言葉といえるのではないでしょうか。
そして、花筏にはもう一つ別に「ハナイカダ」というものがあるのです。
このページでは、「花筏」と「ハナイカダ」それぞれについて、みていくことにしましょう。
花筏とは?
時がたって花びらがなくなった水面に寂しさを感じます
花筏の意味とは?
花筏(はないかだ)とは、散った桜の花びらが水面に浮き、それらが連なって流れていく様子のことをいいます。
その花びらの動く様子を筏(いかだ)に見立てた言葉といわれています。
また、筏に花の枝などを添えたものや、散った花びらが筏にふりかかったものなども、花筏という言葉で表現されます。
花筏の由来は?
この「花筏」の由来・語源を調べてみましたが、決定的なものには行き当たりませんでした。
現代俳句には、花筏を春の季語として詠み込んだものもあります。しかし、古い時代の俳句や和歌などで「花筏」が使われているものは、なかなか見つけられません。
次の与謝蕪村(よさ ぶそん)の句も、「花筏」そのものが詠まれているわけではありません。
ちりつみて 筏も花の 梢かな
唯一、室町時代の『閑吟集(かんぎしゅう)』という歌謡を集めたものに次の歌があり、「花筏」が含まれているものがありました。
吉野川の花筏
浮かれてこがれ候(そろ)よの
浮かれてこがれ候よの
しかし、この時代には使われていた言葉であることが分かったものの、これ以上は遡ることができませんでした。
蒔絵に描かれた花筏
京都の高台寺(こうだいじ=豊臣秀吉の正室・北政所が建立した寺院)の御霊屋(おたまや)には、花筏が描かれた「花筏蒔絵階段」があります。
これは、桃山時代の華麗な蒔絵の象徴ともいえるもので、散りかかった桜の花とともに川を流れる筏が、春の絢爛さを見事に表現しています。
また、この花筏の文様(もんよう=模様:もよう)は吉野川の花筏を表現したものであり、吉野は古くから浄土(じょうど:仏が居る清らかな国)と見立てられていたことから、花筏文様が浄土の象徴であるという見識もあります。
花筏の文様
花筏の文様は、紋所(もんどころ=家紋)としても用いられています。
様々なものがありますが、いずれも花の折り枝と筏を組み合わせた文様となっています。
なお、花筏の文様が家紋とされるようになったのは江戸時代以後のことです。
落語の「花筏」
落語の演目の一つに「花筏」があります。
これは、花筏という名前の力士にまつわる、相撲を題材とした話です。
(あらすじ)
急病で寝込んでしまった大関・花筏に代わって、容姿がそっくりな提灯屋が巡業に出ることになります。
相撲は取らないで土俵入りだけ行うという約束でしたが、千秋楽に花筏と地元の力士の一番が急に決まってしまいます。
そして、相撲を取ったことがない提灯屋は………
なお、この落語演目にちなんで「花筏」を名乗った力士が昭和時代に実在しました。
ハナイカダとは?
ハナイカダ(花筏、Helwingia japonica)
「ハナイカダ」は、モチノキ目に属する落葉低木の名前、つまり植物名です。別名を「ヨメノナミダ」といい、葉の上に花が咲き実をつけるのが特徴です。
花言葉は「気高い人」とされることがあります。
ハナイカダの名前の由来は「花筏(花と筏の組み合わせの意)」であり、花や実が乗った葉を筏に見立てたものといわれています。
また、別名のヨメノナミダの名前の由来は、「嫁ぎ先でつらい思いをした嫁が、人知れず流した涙が葉に落ちたように見える」こととされています。
学術的な細目として植物を表記する場合には、カタカナが使用されます。
また、学術的な文脈での植物の表記にも、カタカナを用いる傾向が強くみられます。
(例) ハナイカダ、ハナミズキ、スズラン、アイリス、アサガオ
まとめ
- 花筏とは、散った桜の花びらが水面に浮き、それらが連なって流れていく様子のことを表現する言葉です。
- ハナイカダとは、葉の上に花が咲き実をつけるのを特徴とする植物の名前です。
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