京都の俳句 50選 -きょうと-
長きにわたって「古都」といわれてきたように、京都には歴史があり、とても風情に満ちた地です。そして、京都の情景については数多くの俳句が詠まれてきました。
このページには、京都の俳句といえるようなものを集めました。これらはいずれも魅力にあふれた素晴らしい作品ばかりなので、是非ともチェックしてみて下さい。
目次
- 1 京都の俳句について
- 2 京都の俳句
- 2.1 烏帽子着た 人も見ゆるや 嵯峨の花
- 2.2 大原や 黒木の中の 梅の花
- 2.3 大原や しづかに曇る 花とわれ
- 2.4 大原や 蝶の出て舞ふ 朧月
- 2.5 おぼろ月 宇治の山辺を 行ひとり
- 2.6 顔出せば 鞍馬の闇よ 秋の宿
- 2.7 陽炎の 中やゆらつく 東山
- 2.8 鞍馬路の 野菊みぞそば きりもなや
- 2.9 清水の 上から出たり 春の月
- 2.10 清水の 阪のぼり行く 日傘哉
- 2.11 嵯峨までは 見事あゆみぬ 花盛
- 2.12 静かさや 師走の奥の 知恩院
- 2.13 寂光院 みあかしつきぬ 秋の暮
- 2.14 白川の 秋の暮なる 瀬音かな
- 2.15 白河や 若きもかゞむ 初月夜
- 2.16 涼しさや 見世より裏を 東山
- 2.17 すずしさを 絵にうつしけり 嵯峨の竹
- 2.18 旅ここに 寂光院は 春の寂び
- 2.19 月見せん 伏見の城の 捨郭
- 2.20 照り返す 伏見のかたや 桃の花
- 2.21 流るゝか 雲に柳の あらし山
- 2.22 苗代や 鞍馬の櫻 ちりにけり
- 2.23 仁和寺や あしもとよりぞ 花の雲
- 2.24 ねぶたさの 春は御室の 花よりぞ
- 2.25 橋立や 夜明夜明の 天の川
- 2.26 初蝉の 清水阪を のぼりけり
- 2.27 はな散りて 三日月高し 嵐山
- 2.28 春の日や 加茂川に逢う 桂川
- 2.29 雲雀鳴く 下はかつらの 河原哉
- 2.30 昼月の 高くて秋の 鞍馬路
- 2.31 ひろひたる 寂光院の 紅葉かな
- 2.32 冬晴や さびしくなりし 嵐山
- 2.33 降る雨も 小春なりけり 知恩院
- 2.34 時鳥 あれに見ゆるが 知恩院
- 2.35 みじか夜や 伏見の戸ぼそ 淀の窓
- 2.36 名月や 膳にすゑたる 東山
- 2.37 山吹や 宇治の焙炉の 匂ふ時
- 2.38 夜桜や ここより見えぬ 東山
- 2.39 恋々と はなにしづめり 嵐山
- 2.40 若竹や 夕日の嵯峨と なりにけり
- 3 金閣寺・銀閣寺・清水寺の俳句
京都の俳句について
嵯峨、大原、宇治、東山、清水、伏見、嵐山、知恩院、寂光院、仁和寺、金閣寺、銀閣寺、清水寺など京都の地名や寺院が詠み込まれているものを 50句を選び、俳句の先頭の文字の五十音順に並べました。これらは春、夏、秋、冬の京都の情景を鮮やかに表わしているので、その素晴らしさを是非とも味わってみて下さい。
また、京都の和歌と短歌については、以下のページをご覧になって下さい。
京都の俳句
まずは、嵯峨、大原、宇治、東山、清水、伏見、嵐山、知恩院、寂光院、仁和寺などの地名が詠み込まれた俳句からみていきましょう。
烏帽子着た 人も見ゆるや 嵯峨の花
【季語】花-春
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】烏帽子(えぼし)とは、日本の伝統的な帽子で男性用のものです。
大原や 黒木の中の 梅の花
【季語】梅-春
【作者】正岡子規
大原や しづかに曇る 花とわれ
【季語】花-春
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
大原や 蝶の出て舞ふ 朧月
【季語】朧月-春
【作者】内藤丈草(ないとう じょうそう)
【補足】「朧月」の読み方は「おぼろづき」です。
おぼろ月 宇治の山辺を 行ひとり
【季語】おぼろ月-春
【作者】加藤暁台(かとう きょうたい)
【補足】暁台は江戸時代中期の俳人で、蕉風(しょうふう=松尾芭蕉らが信奉した俳風)の復興を目指して活動しました。
顔出せば 鞍馬の闇よ 秋の宿
【季語】秋の宿-秋
【作者】大野林火(おおの りんか)
陽炎の 中やゆらつく 東山
【季語】陽炎-春
【作者】森川許六(もりかわ きょりく)
【補足】許六は江戸時代前期~中期の俳人で、蕉門十哲の一人です。
鞍馬路の 野菊みぞそば きりもなや
【季語】野菊-秋
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
清水の 上から出たり 春の月
【季語】春の月
【作者】森川許六
清水の 阪のぼり行く 日傘哉
【季語】日傘-夏
【作者】正岡子規
嵯峨までは 見事あゆみぬ 花盛
【季語】花盛-春
【作者】山本荷兮(やまもと かけい)
静かさや 師走の奥の 知恩院
【季語】師走(しわす)-冬
【作者】正岡子規
寂光院 みあかしつきぬ 秋の暮
【季語】秋の暮-秋
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
白川の 秋の暮なる 瀬音かな
【季語】秋の暮
【作者】日野草城
白河や 若きもかゞむ 初月夜
【季語】初月(はつづき)-秋
【作者】山口素堂(やまぐち そどう)
【補足】素堂は江戸時代前期の俳人で、「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」の句が有名です。
涼しさや 見世より裏を 東山
【季語】涼し-夏
【作者】与謝蕪村(よさ ぶそん)
【補足】蕪村は江戸時代中期の俳人で、松尾芭蕉に憧れていて、その足跡を辿って東北地方を旅しました。
すずしさを 絵にうつしけり 嵯峨の竹
【季語】すずし-夏
【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)
【補足】芭蕉は江戸時代前期の俳人で、前出の蕉風と呼ばれる句風を確立し、後世では俳聖といわれています。
旅ここに 寂光院は 春の寂び
【季語】春
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
月見せん 伏見の城の 捨郭
【季語】月見-秋
【作者】向井去来(むかい きょらい)
照り返す 伏見のかたや 桃の花
【季語】桃の花-春
【作者】炭太祇(たん たいぎ)
【補足】太祇は江戸時代中期の俳人で、与謝蕪村と交流があったといわれています。
流るゝか 雲に柳の あらし山
【季語】柳-春
【作者】岩田涼菟(いわた りょうと)
【補足】涼菟は江戸時代中期の俳人です。蕉門に入り、後には「伊勢派」と呼ばれました。
苗代や 鞍馬の櫻 ちりにけり
【季語】苗代(なわしろ)-春
【作者】与謝蕪村
仁和寺や あしもとよりぞ 花の雲
【季語】花-春
【作者】黒柳召波(くろやなぎ しょうは)
【補足】召波は江戸時代中期の俳人です。漢詩を学んでいましたが、後に蕪村の弟子となりました。
ねぶたさの 春は御室の 花よりぞ
【季語】春
【作者】与謝蕪村
橋立や 夜明夜明の 天の川
【季語】天の川-秋
【作者】松岡青蘿(まつおか せいら)
【補足】青蘿は江戸時代中期~後期の俳人で、加藤暁台(かとう きょうたい)、高井几董(たかい きとう)らと親交がありました。
[美しき日本] 京都
初蝉の 清水阪を のぼりけり
【季語】初蝉-夏
【作者】日野草城
はな散りて 三日月高し 嵐山
【季語】はな散りて-春
【作者】松岡青蘿
春の日や 加茂川に逢う 桂川
【季語】春の日
【作者】日野草城
雲雀鳴く 下はかつらの 河原哉
【季語】雲雀(ひばり)-春
【作者】野沢凡兆(のざわ ぼんちょう)
【補足】凡兆は江戸時代前期の俳人です。松尾芭蕉に師事しましたが、後に離れました。
昼月の 高くて秋の 鞍馬路
【季語】秋
【作者】飯田蛇笏
ひろひたる 寂光院の 紅葉かな
【季語】紅葉-秋
【作者】山口青邨
冬晴や さびしくなりし 嵐山
【季語】冬晴
【作者】日野草城
降る雨も 小春なりけり 知恩院
【季語】小春(こはる)-冬
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【補足】一茶は江戸時代中期の俳人で、松尾芭蕉、与謝蕪村と並んで名が知られています。
時鳥 あれに見ゆるが 知恩院
【季語】時鳥(ほととぎす)-夏
【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)
みじか夜や 伏見の戸ぼそ 淀の窓
【季語】みじか夜-夏
【作者】与謝蕪村
名月や 膳にすゑたる 東山
【季語】名月-秋
【作者】各務支考(かがみ しこう)
【補足】支考は江戸時代前期の俳人で、松尾芭蕉の門下でした。
山吹や 宇治の焙炉の 匂ふ時
【季語】山吹-春
【作者】松尾芭蕉
夜桜や ここより見えぬ 東山
【季語】夜桜-春
【作者】高野素十(たかの すじゅう)
恋々と はなにしづめり 嵐山
【季語】はな-春
【作者】加藤暁台
若竹や 夕日の嵯峨と なりにけり
【季語】若竹-夏
【作者】与謝蕪村
金閣寺・銀閣寺・清水寺の俳句
次に、金閣寺、銀閣寺、清水寺が詠み込まれた俳句をみていきましょう。
鳥啼くや 狭霧うするる 金閣寺
【季語】狭霧(さぎり、さきり)-秋
【作者】日野草城
初雪の あとの青空 金閣寺
【季語】初雪-冬
【作者】長谷川櫂(はせがわ かい)
春雨の 傘さしつれて 金閣寺
【季語】春雨-春
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
水澄みて 金閣の金 さしにけり
【季語】水澄む-秋
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
銀閣寺 門前の田の 案山子かな
【季語】案山子(かかし)-秋
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
銀閣に 浪花の人や 大文字
【季語】大文字-秋
【作者】与謝蕪村
銀のなき 銀閣驟雨 ひた濡らす
【季語】驟雨(しゅうう)-夏
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
正面の 椿の花が 銀閣寺
【季語】椿-春
【作者】京極杞陽(きょうごく きよう)
春寒や 竹の中なる 銀閣寺
【季語】春寒-春
【作者】芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
稲光 雲の中なる 清水寺
【季語】稲光-秋
【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)
関 連 ペ ー ジ