短夜の俳句 30選 -みじかよ-
夏の夜というものは、朝までの時間がとても短く感じられます。
そのような感覚を的確に表現する言葉として「短夜(みじかよ)」「明易し(あけやすし)」があり、季語として数多くの俳句作品に詠みこまれてきました。
このページには、「短夜」「明易し」が詠まれた俳句の中から 30句を選びました。夏の夜が持つ特有の雰囲気が伝わってくる作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 短夜の俳句
- 1.1 短夜に 竹の風癖 直りけり
- 1.2 短夜の 明けて論語を 読む子かな
- 1.3 短夜の あけゆく水の 匂ひかな
- 1.4 短夜の 色なき夢を みて覚めし
- 1.5 短夜の 扇引き去る 鼠かな
- 1.6 短夜の 鐘のねいろに 目覚めけり
- 1.7 短夜の 河のにほへり くらがりに
- 1.8 短夜の 狐を化かす 狐あり
- 1.9 短夜の 櫛一枚や 旅衣
- 1.10 短夜の 死ぬるといふは 眠ること
- 1.11 短夜の 壺の白百合 咲き競ひ
- 1.12 短夜の 汝が描きし 樹々は立つ
- 1.13 短夜の 芭蕉は伸びて 仕まひけり
- 1.14 短夜の ほそめほそめし 灯のもとに
- 1.15 短夜の 夢なら覚めな 樽碪
- 1.16 短夜の 夢はこの世に とどまれる
- 1.17 短夜や かくも咲きゐし 若薺
- 1.18 短夜や 伽羅の匂ひの 胸ふくれ
- 1.19 短夜や 汲み過ぎし井の 澄みやらぬ
- 1.20 短夜や 笹の葉先に とめし露
- 2 「明易し」の俳句
短夜の俳句
短夜が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
なお、短夜は俳句において夏の季語として扱われます。
短夜に 竹の風癖 直りけり
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
短夜の 明けて論語を 読む子かな
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】論語(ろんご)は、中国・春秋時代の思想家である孔子(こうし)と弟子たちとの問答を集録した書物です。『大学』『中庸』『論語』『孟子』は四書(ししょ)と呼ばれます。
短夜の あけゆく水の 匂ひかな
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
短夜の 色なき夢を みて覚めし
【作者】西島麦南(にしじま ばくなん)
【補足】「覚めし」の読み方は「さめし」です。
短夜の 扇引き去る 鼠かな
【作者】会津八一(あいづ やいち)
短夜の 鐘のねいろに 目覚めけり
【作者】瀧井孝作(たきい こうさく)
短夜の 河のにほへり くらがりに
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
短夜の 狐を化かす 狐あり
【作者】内田百間(うちだ ひゃっけん)
短夜の 櫛一枚や 旅衣
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
【補足】「櫛」の読み方は「くし」です。旅衣(たびごろも)とは、旅で着る衣服のことをいいます。
短夜の 死ぬるといふは 眠ること
【作者】西島麦南
短夜の 壺の白百合 咲き競ひ
【作者】三橋鷹女(みつはし たかじょ)
短夜の 汝が描きし 樹々は立つ
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
【補足】汝(なんじ)は、文語における第二人称代名詞です。
短夜の 芭蕉は伸びて 仕まひけり
【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)
【補足】芭蕉(ばしょう)はバショウ科の多年草です。
短夜の ほそめほそめし 灯のもとに
【作者】中村汀女
【補足】「灯」の読み方は「ひ」です。
短夜の 夢なら覚めな 樽碪
【作者】尾崎紅葉(おざき こうよう)
【補足】樽碪(たるぎぬた)は木製の「樽」で、新潟甚句(にいがたじんく)という民謡の伴奏に用いられることで知られています。
短夜の 夢はこの世に とどまれる
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
短夜や かくも咲きゐし 若薺
【作者】渡辺水巴(わたなべ すいは)
【補足】薺(なずな)は春の七草の一つに数えられ、「ぺんぺん草」「三味線草(しゃみせんぐさ)」とも呼ばれています。
短夜や 伽羅の匂ひの 胸ふくれ
【作者】高井几董(たかい きとう)
【補足】伽羅(きゃら)は香木(こうぼく)の名前です。
短夜や 汲み過ぎし井の 澄みやらぬ
【作者】森 鴎外(もり おうがい)
【補足】「汲み」の読み方は「くみ」です。
短夜や 笹の葉先に とめし露
【作者】高橋淡路女(たかはし あわじじょ)
「明易し」の俳句
「明易し」も夏の季語です。
短夜は「夜」の短さについて表現されるのに対し、「明易し」は夜明けが早いことに重きが置かれます。
明易き 人の出入や 麻暖簾
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
【補足】「麻暖簾」の読み方は「あさのれん」です。
明易き 水に大魚の 行き来かな
【作者】芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
明易き 夜の夢にみし ものを羞づ
【作者】日野草城
【補足】「羞づ」の読み方は「はづ(=恥じる)」です。
明易し 杉の木立の すくとあり
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
【補足】「木立」の読み方は「こだち」です。
カーテンの 太しく垂れて 明易き
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
獺に 燈をぬすまれて 明易き
【作者】久保田万太郎
【補足】「獺」「燈」の読み方は、それぞれ「かわうそ」「ひ」です。
五時起も 習ひとなりぬ 明易き
【作者】高浜年尾(たかはま としお)
【補足】「習ひ」の読み方は「ならい(=習慣の意味)」です。
旅仕度 とゝのへあれば 明易き
【作者】上村占魚(うえむら せんぎょ)
【補足】「旅仕度」の読み方は「たびじたく」です。
ふすまもる 灯影のありて 明易き
【作者】久保田万太郎
【補足】「灯影」の読み方は「ほかげ」です。
みちのくの 宿り宿りの 明易き
【作者】高野素十(たかの すじゅう)
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