猫の俳句 50選 -猫の恋-
猫はとても可愛らしい動物で、特に子猫の仕草などの愛らしさには、たまらない魅力があります。
それらは多くの俳句にも詠み込まれてきましたし、猫に関係する季語もいくつかあります。
このページには、俳句の中に猫が詠まれているものを集めました。猫の可愛らしいしぐさが目に浮かぶようなものばかりですので、是非ともチェックしてみて下さい。
目次
- 1 猫の俳句について
- 2 猫の俳句 50選
- 2.1 朝貌の 葉影に猫の 眼玉かな
- 2.2 あの声は 何いふ事ぞ 猫の恋
- 2.3 あら猫の かけ出す軒や 冬の月
- 2.4 淡雪や 通ひ路細き 猫の恋
- 2.5 今の世や 猫も杓子も 花見笠
- 2.6 梅がゝや 耳かく猫の 影ぼうし
- 2.7 うしろから 猫の飛びつく 袷哉
- 2.8 薄目あけ 人嫌ひなり 炬燵猫
- 2.9 うつゝなに 泣く児あやすや 猫の恋
- 2.10 おもひ寐の 耳に動くや 猫の恋
- 2.11 親として かくれんぼする 子猫哉
- 2.12 かげろふや 猫にのまるる 水たまり
- 2.13 傾城も 猫もそろふて 雜煮哉
- 2.14 紅梅の 咲くより猫の 静か也
- 2.15 この月夜 いつか見たりき 猫の恋
- 2.16 恋猫と 語る女は 憎むべし
- 2.17 恋猫と はやなりにけり 鈴に泥
- 2.18 声たてぬ 時が別れぞ 猫の恋
- 2.19 しろたへの 鞠のごとくに 竈猫
- 2.20 炭出しに 出てもつき来る 猫可愛
- 2.21 竹の子に 身をする猫の たはれ哉
- 2.22 月の出の 夜々におくるゝ 猫の恋
- 2.23 永き日や 巳の刻よりの 眠り猫
- 2.24 鳴く猫に 赤ン目をして 手まり哉
- 2.25 何もかも 知ってをるなり 竈猫
- 2.26 なりふりも 親そつくりの 子猫哉
- 2.27 ぬつくりと 寐て居る猫や 梅の股
- 2.28 濡れて来し 雨をふるふや 猫の妻
- 2.29 猫逃げて 梅動きけり 朧月
- 2.30 猫のゐて ぺんぺん草を 食みにけり
- 2.31 猫の恋 昴は天に のぼりつめ
- 2.32 猫の子の くんずほぐれつ 胡蝶かな
- 2.33 猫の子や 秤にかかり つつじやれる
- 2.34 猫の子に 嗅れて居るや 蝸牛
- 2.35 猫の子の 針箱こけし 真逆様
- 2.36 猫も聞け 杓子も是へ 時鳥
- 2.37 寝て起て 大欠して 猫の恋
- 2.38 橋の上に 猫ゐて淋し 後の月
- 2.39 羽二重の 膝に飽きてや 猫の恋
- 2.40 春の猫 夕づく炉辺に めざめけり
- 2.41 昼顔に 猫捨てられて 泣きにけり
- 2.42 ふみ分けて 雪にまよふや 猫の恋
- 2.43 振袖を 着せてやりたや 猫の妻
- 2.44 古猫の 相伴にあふ 卯杖哉
- 2.45 またうどな 犬ふみつけて 猫の恋
- 2.46 又ここに 猫の恋路と ききながし
- 2.47 短さに 蒲團を引けば 猫の聲
- 2.48 山こむる 霧の底ひの 猫の恋
- 2.49 山里や 昔かたぎの 猫と萩
- 2.50 雪の日や 巨燵の上に 眠る猫
- 3 猫に関する季語
猫の俳句について
このページには、俳句の中に猫が詠み込まれているものを 50句選びました。
それぞれの俳句の季語・季節を記して、句の文字の五十音順に並べてあります。
なお、猫に関する季語についてもまとめましたので、参考になさって下さい。
猫の俳句 50選
朝貌の 葉影に猫の 眼玉かな
【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)
【季語】朝貌(あさがお) - 秋
あの声は 何いふ事ぞ 猫の恋
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【季語】猫の恋 - 春
【補足】春の交尾の時期になった猫が、毎晩のように鳴きわめく様子を表現したのが「猫の恋」です。
あら猫の かけ出す軒や 冬の月
【作者】内藤丈草(ないとう じょうそう)
【季語】冬の月 - 冬
【補足】「軒」の読み方は「のき」です。
淡雪や 通ひ路細き 猫の恋
【作者】寺田寅彦(てらだ とらひこ)
【季語】淡雪、猫の恋 - 春
今の世や 猫も杓子も 花見笠
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【季語】花見 - 春
【補足】「猫も杓子(しゃくし)も」は「だれでも、どんな者も」を意味する表現です。
梅がゝや 耳かく猫の 影ぼうし
【作者】横井也有(よこい やゆう)
【季語】梅がゝ(梅が香) - 春
【補足】影ぼうし(法師)とは、物に映った人の影のことをいいます。
うしろから 猫の飛びつく 袷哉
【作者】正岡子規
【季語】袷 - 夏
【補足】袷(あわせ)とは、裏付きの着物のことです。句末の「哉(かな)」は、詠嘆や感動を表わします。
薄目あけ 人嫌ひなり 炬燵猫
【作者】松本たかし(まつもと たかし)
【季語】炬燵猫(こたつねこ) - 冬
【補足】「炬燵(こたつ)」は冬の季語です。
うつゝなに 泣く児あやすや 猫の恋
【作者】高橋淡路女(たかはし あわじじょ)
【季語】猫の恋 - 春
【補足】「うつゝなに」は「目がさめて」の意味です。
おもひ寐の 耳に動くや 猫の恋
【作者】炭 太祇(たん たいぎ)
【季語】猫の恋 - 春
【補足】おもひ寐(思い寝)とは、ものや人を思いながら寝ることをいいます。
親として かくれんぼする 子猫哉
【作者】小林一茶
【季語】 子猫 - 春
【補足】「子猫、仔猫(こねこ)」「猫の子」などは春の季語です。
かげろふや 猫にのまるる 水たまり
【作者】芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
【季語】かげろふ(陽炎) - 春
傾城も 猫もそろふて 雜煮哉
【作者】正岡子規
【季語】雜煮(ぞうに) - 冬(新年)
【補足】傾城(けいせい)とは、(城を傾けるような)絶世の美人を表現する言葉です。「雜」は「雑」の旧字体です。
紅梅の 咲くより猫の 静か也
【作者】正岡子規
【季語】紅梅 - 春
【補足】「也」の読み方は「なり」です。
この月夜 いつか見たりき 猫の恋
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
【季語】猫の恋 - 春
【補足】「見たりき」は「見た、見ていた」という意味です。
恋猫と 語る女は 憎むべし
【作者】西東三鬼(さいとう さんき)
【季語】恋猫 - 春
【補足】「恋猫(こいねこ)」も、「猫の恋」と同様に春の季語です。
恋猫と はやなりにけり 鈴に泥
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【季語】恋猫 - 春
声たてぬ 時が別れぞ 猫の恋
【作者】加賀千代女(かがの ちよじょ)
【季語】猫の恋 - 春
しろたへの 鞠のごとくに 竈猫
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
【季語】竈猫 - 冬
【補足】竈猫(かまどねこ)とは、火のぬくもりを求めて竈に来る猫のことをいいます。「鞠」の読み方は「まり」です。
炭出しに 出てもつき来る 猫可愛
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
【季語】炭 - 冬
竹の子に 身をする猫の たはれ哉
【作者】森川許六(もりかわ きょりく)
【季語】竹の子 - 夏
【作者】「たはれ」は「戯れ(たわむれ)」のことです。
月の出の 夜々におくるゝ 猫の恋
【作者】山口誓子
【季語】猫の恋 - 春
【補足】夜々(よよ)とは、「毎晩、夜毎(よごと)」という意味です。
永き日や 巳の刻よりの 眠り猫
【作者】野村喜舟(のむら きしゅう)
【季語】永き日 - 春
【補足】巳の刻(みのこく)とは、現代の午前 10時頃に相当します。
鳴く猫に 赤ン目をして 手まり哉
【作者】小林一茶
【季語】手まり - 冬(新年)
【補足】一茶は次の句も残していましす。
鳴く猫に 赤ン目と云 手まり哉
何もかも 知ってをるなり 竈猫
【作者】富安風生
【季語】竈猫 - 冬
なりふりも 親そつくりの 子猫哉
【作者】小林一茶
【季語】子猫 - 春
ぬつくりと 寐て居る猫や 梅の股
【作者】高井几董(たかい きとう)
【季語】梅 - 春
濡れて来し 雨をふるふや 猫の妻
【作者】炭 太祇
【季語】猫の妻 - 春
【補足】同様の「猫の夫(つま)」も春の季語です。
猫逃げて 梅動きけり 朧月
【作者】池西言水(いけにし ごんすい)
【季語】梅、朧月(おぼろづき) - 春
猫のゐて ぺんぺん草を 食みにけり
【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)
【季語】ぺんぺん草 - 春
【補足】ぺんぺん草は、ナズナ(薺)の別名です。「食みにけり」の読み方は「はみにけり」です。
猫の恋 昴は天に のぼりつめ
【作者】山口誓子
【季語】猫の恋 - 春
【補足】昴(すばる)は牡牛座(おうしざ)にある星で、肉眼で 6つ見えるものです。「六連星(むつらぼし)」「すばる星」「すまる」とも呼ばれます。
猫の子の くんずほぐれつ 胡蝶かな
【作者】宝井其角(たからい きかく)
【季語】猫の子 - 春
【補足】胡蝶(こちょう)は「蝶」の異名です。
猫の子や 秤にかかり つつじやれる
【作者】小林一茶
【季語】猫の子 - 春
【補足】「秤」の読み方は「はかり」です。
猫の子に 嗅れて居るや 蝸牛
【作者】椎本才麿(しいのもと さいまろ)
【季語】猫の子 - 春、蝸牛(かたつむり) - 夏
猫の子の 針箱こけし 真逆様
【作者】富安風生
【季語】猫の子 - 春
【補足】「真逆様」の読み方は「まさかさま」です。
猫も聞け 杓子も是へ 時鳥
【作者】夏目漱石
【季語】時鳥(ほととぎす) - 夏
【補足】「是」の読み方は「これ」です。
寝て起て 大欠して 猫の恋
【作者】小林一茶
【季語】猫の恋 - 春
【補足】「大欠」の読み方は「おおあくび」です。
橋の上に 猫ゐて淋し 後の月
【作者】村上鬼城
【季語】後の月 - 秋
【補足】後の月(のちのつき)とは、十三夜(じゅうさんや=旧暦 9月13日の夜)の月のことをいいます。
羽二重の 膝に飽きてや 猫の恋
【作者】各務支考(かがみ しこう)
【季語】猫の恋 - 春
【補足】羽二重(はぶたえ)は絹織物の一種です。
春の猫 夕づく炉辺に めざめけり
【作者】西島麦南(にしじま ばくなん)
【季語】春の猫 - 春
【補足】「夕づく」とは「夕方になる」の意味で、「炉辺」の読み方は「ろばた」です。
昼顔に 猫捨てられて 泣きにけり
【作者】村上鬼城
【季語】昼顔 - 夏
ふみ分けて 雪にまよふや 猫の恋
【作者】加賀千代女
【季語】雪 - 冬、猫の恋 - 春
振袖を 着せてやりたや 猫の妻
【作者】正岡子規
【季語】猫の妻 - 春
古猫の 相伴にあふ 卯杖哉
【作者】森川許六
【季語】卯杖 - 冬(新年)
【補足】相伴(しょうばん)とは、正客(しょうきゃく=客の中で一番主な客)の相手となって、一緒に接待を受けることをいいます。卯杖(うづえ)は、邪気を祓う道具の一つです。
またうどな 犬ふみつけて 猫の恋
【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)
【季語】猫の恋 - 春
【補足】「またうどな」は「真面目な(まじめな)、正直な」という意味ですが、「真面目すぎる」といったニュアンスを持った言葉です。
又ここに 猫の恋路と ききながし
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【季語】猫の恋 - 春
短さに 蒲團を引けば 猫の聲
【作者】正岡子規
【季語】蒲團(ふとん) - 冬
【補足】「團」「聲」は、それぞれ「団」「声」の旧字体です。
山こむる 霧の底ひの 猫の恋
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
【季語】猫の恋 - 春
【補足】「底ひ」とは「きわめて深い底」を意味します。
山里や 昔かたぎの 猫と萩
【作者】小林一茶
【季語】萩 - 秋
雪の日や 巨燵の上に 眠る猫
【作者】正岡子規
【季語】雪、巨燵(こたつ) - 冬
猫に関する季語
俳句において、「猫」単体では季語とはなりませんが、他の語と結びついて季語となるものがあります。
そのような、俳句に用いられる季語で猫に関係したものを一覧にしました。
季語 | 季節 |
猫の恋 | 春 |
恋猫 | |
猫の妻 | |
猫の夫 | |
春の猫 | |
うかれ猫 | |
猫の子 | |
子猫、仔猫 | |
竈猫 | 冬 |
へっつい猫 | |
灰猫 | |
かじけ猫 | |
炬燵猫 |
- 「へっつい」は「竈(かまど)」のことで、関西で使われることが多い呼び名です。
- 「かじける」は「かじかむ(=寒さで手足が思うように動かせなくなる)」と同じ意味です。
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