蝉時雨の俳句 20選 -せみしぐれ-
数多くの蝉が一斉に鳴いているときの声は「蝉時雨(せみしぐれ)」と表現され、俳句の季語にもなっています。
時雨とは、降ったり止んだりする雨のことをいいますが、たしかに蝉の鳴き声が集まると、その音は雨さながらに降り注いでくるように感じられるものです。
このページには、蝉時雨が詠まれた俳句の中から 20句を選びました。夏の蝉の鳴き声が聞こえてくるかのような作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 蝉時雨の俳句 20選
- 1.1 汗を吹く 茶屋の松風 蝉時雨
- 1.2 石に沁む 石工の汗や 蝉時雨
- 1.3 いと低き 幹にも蝉や 蝉時雨
- 1.4 浮嶋や うごきながらの 蝉時雨
- 1.5 うれしさは かなしみとなり 蝉時雨
- 1.6 還ります 人に故国の 蝉時雨
- 1.7 笠とるや 杜の下道 蝉時雨
- 1.8 渓流を 掃けばすぐ澄む 蝉時雨
- 1.9 将軍の 位に坐して 蝉時雨
- 1.10 蝉時雨 仰むく口や 木の雫
- 1.11 蝉時雨 木々ふるはせて 光堂
- 1.12 蝉時雨 木彫仏の 縦の木肌
- 1.13 蝉時雨 供華の花束 砂にさし
- 1.14 蝉時雨 中に鳴きやむ ひとつかな
- 1.15 蝉時雨 庇の下を 通ひ路に
- 1.16 蝉時雨 日斑あびて 掃き移る
- 1.17 蝉時雨 まひるの山は 荒々し
- 1.18 橙青き 丘の別れや 蝉時雨
- 1.19 どこまでも 蝉時雨とは 包まれて
- 1.20 墓石より 温みつたはり 蝉時雨
蝉時雨の俳句 20選
蝉時雨が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
なお、俳句において「蝉時雨」は夏の季語とされています。
汗を吹く 茶屋の松風 蝉時雨
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】松風(まつかぜ)とは、松に吹く風、また、その音のことをいいます。
石に沁む 石工の汗や 蝉時雨
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】「沁む」「石工」の読み方は、それぞれ「しむ」「いしく(=石大工:いしだいく)」です。
いと低き 幹にも蝉や 蝉時雨
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
浮嶋や うごきながらの 蝉時雨
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
うれしさは かなしみとなり 蝉時雨
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
還ります 人に故国の 蝉時雨
【作者】阿部みどり女
【補足】「還ります」の読み方は「かえります」です。
笠とるや 杜の下道 蝉時雨
【作者】正岡子規
【補足】社(やしろ)とは、神をまつっている建物、神社のことをいいます。
渓流を 掃けばすぐ澄む 蝉時雨
【作者】川端茅舎(かわばた ぼうしゃ)
将軍の 位に坐して 蝉時雨
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
蝉時雨 仰むく口や 木の雫
【作者】正岡子規
【補足】「雫」の読み方は「しずく」です。
蝉時雨 木々ふるはせて 光堂
【作者】平畑静塔(ひらはた せいとう)
【補足】光堂(ひかりどう)とは、金色に装飾した堂のことです。金色堂(こんじきどう)ともいいます。
蝉時雨 木彫仏の 縦の木肌
【作者】大野林火(おおの りんか)
【補足】「木肌」の読み方は「きめ」です。
蝉時雨 供華の花束 砂にさし
【作者】阿部みどり女
【補足】供華(くげ)とは、仏前に供える花のことです。
蝉時雨 中に鳴きやむ ひとつかな
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
蝉時雨 庇の下を 通ひ路に
【作者】大野林火
【補足】「庇」の読み方は「ひさし(=廂)」です。
蝉時雨 日斑あびて 掃き移る
【作者】杉田久女(すぎた ひさじょ)
【補足】「斑」の読み方は「まだら」です。
蝉時雨 まひるの山は 荒々し
【作者】阿部みどり女
橙青き 丘の別れや 蝉時雨
【作者】横光利一(よこみつ りいち)
【補足】「橙」の読み方は「だいだい」です。
どこまでも 蝉時雨とは 包まれて
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
墓石より 温みつたはり 蝉時雨
【作者】阿部みどり女
【補足】「温み」の読み方は「ぬくみ」です。
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