新茶の俳句 30選 -走り茶-
その年の新芽を摘んでつくられた新茶には、何ともいえない嬉しさを感じてしまいます。
新茶が出始める頃には、草木も新緑に包まれるようになり、そのような風景の中で味わうお茶は格別です。
このページには、新茶が詠まれた俳句の中から 30句を選びました。待ちかねていた新茶を手に入れた喜びを表現した作品を、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 新茶の俳句 30選
- 1.1 青新茶 土間にこぼして はかりけり
- 1.2 生きてゐる しるしに新茶 おくるとか
- 1.3 入れ方を 問うて新茶で ありしこと
- 1.4 宇治に似て 山なつかしき 新茶かな
- 1.5 白湯染めて 新茶の味と なりにけり
- 1.6 さら~と 溢るゝ新茶 壺の肩
- 1.7 サラサラと 和尚がこぼす 新茶かな
- 1.8 白糸の 鳴りて封ずる 新茶買ふ
- 1.9 新茶淹れ しばらく心 遊びけり
- 1.10 新茶いれ ひとのよろこびごと 妻と
- 1.11 新茶買ふ 壺みな光る 宵の灯に
- 1.12 新茶来て 小さき壺に ややあふる
- 1.13 新茶くむ しづく配りに 十余客
- 1.14 新茶して 五箇国の王に 居る身かな
- 1.15 新茶の香 一針二葉 より走る
- 1.16 新茶の香 真昼の眠気 転じたり
- 1.17 新茶より はじまるけふの 空腹か
- 1.18 たら~と 老のふり出す 新茶かな
- 1.19 点心は まづしけれども 新茶かな
- 1.20 天目で 新茶くれけり 里祭
- 1.21 とろとろと 舌に触れたる 新茶かな
- 1.22 花過ぎて ゆふべ人恋ふ 新茶かな
- 1.23 一枝の 牡丹酬ゆる 新茶哉
- 1.24 方丈に 今とどきたる 新茶かな
- 1.25 方寸の 壷にあふるゝ 新茶かな
- 1.26 ほととぎす 新茶より濃 声の色
- 1.27 參らせん 親は在さぬ 新茶哉
- 1.28 夕映えて 海女とらへをり 新茶売
- 1.29 夜も更けて 新茶ありしを おもひいづ
- 1.30 若葉して 命めでたき 新茶かな
新茶の俳句 30選
「新茶」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
新茶は「走り茶」ともいわれることがあり、俳句において夏の季語として扱われます。
青新茶 土間にこぼして はかりけり
【作者】長谷川かな女(はせがわ かなじょ)
生きてゐる しるしに新茶 おくるとか
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
入れ方を 問うて新茶で ありしこと
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
宇治に似て 山なつかしき 新茶かな
【作者】各務支考(かがみ しこう)
【補足】宇治茶(うじちゃ…緑茶)は、静岡茶、狭山茶とあわせて日本三大茶といわれています。
白湯染めて 新茶の味と なりにけり
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【補足】白湯(さゆ)とは、何もまぜない湯のことをいいます。「お茶」などに対する言い方です。
さら~と 溢るゝ新茶 壺の肩
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
【補足】「溢るゝ」「壺」の読み方は、それぞれ「あふるる」「つぼ」です。
サラサラと 和尚がこぼす 新茶かな
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
【補足】和尚(おしょう)とは、寺院の住職や僧侶のことをいいます。
白糸の 鳴りて封ずる 新茶買ふ
【作者】皆吉爽雨(みなよし そうう)
【補足】お茶の量り売りでは、お茶の袋を封じるのに白い細紐が使われてきました。
新茶淹れ しばらく心 遊びけり
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
【補足】「淹れ」の読み方は「いれ」です。
新茶いれ ひとのよろこびごと 妻と
【作者】山口青邨
新茶買ふ 壺みな光る 宵の灯に
【作者】皆吉爽雨
【補足】宵(よい)とは、日が暮れてからしばらくの間のことをいいます。
新茶来て 小さき壺に ややあふる
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
新茶くむ しづく配りに 十余客
【作者】皆吉爽雨
【補足】十余客(じゅうよきゃく)とは、十数人の客という意味です。
新茶して 五箇国の王に 居る身かな
【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)
【補足】この句の前書きに「宇治(京都)の茶、万古(ばんこ:三重)の急須、相馬(そうま:福島)の茶碗、美濃(みの:岐阜)の柿、伊香保(いかほ:群馬)の盆かぞへ来ればなかなか勿体なし」とあります。
新茶の香 一針二葉 より走る
【作者】百合山羽公
新茶の香 真昼の眠気 転じたり
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
新茶より はじまるけふの 空腹か
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
【補足】「けふ」は「きょう(今日)」のことです。
たら~と 老のふり出す 新茶かな
【作者】村上鬼城
点心は まづしけれども 新茶かな
【作者】芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
【補足】点心(てんしん)とは、お茶を飲むときに食べる菓子・漬物などの「茶請け(ちゃうけ)」のことです。
天目で 新茶くれけり 里祭
【作者】森川許六(もりかわ きょりく)
【補足】天目(てんもく)とは、茶の湯で使う「すり鉢」状の茶椀のことです。
とろとろと 舌に触れたる 新茶かな
【作者】日野草城
花過ぎて ゆふべ人恋ふ 新茶かな
【作者】渡辺水巴(わたなべ すいは)
一枝の 牡丹酬ゆる 新茶哉
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】「酬ゆる」の読み方は「むくゆる」です。
方丈に 今とどきたる 新茶かな
【作者】高浜虚子
【補足】方丈(ほうじょう)とは、寺の中にある住職、あるいは住職のことを意味します。
方寸の 壷にあふるゝ 新茶かな
【作者】前田普羅
【補足】方寸(ほうすん)とは、一寸平方(=約 3センチ平方)のことで、ごく小さいことを意味します。
ほととぎす 新茶より濃 声の色
【作者】椎本才麿(しいのもと さいまろ)
參らせん 親は在さぬ 新茶哉
【作者】寺田寅彦(てらだ とらひこ)
【補足】「參」は「参」の旧字体です。
夕映えて 海女とらへをり 新茶売
【作者】石田波郷(いしだ はきょう)
【補足】海女(あま)とは、海にもぐって貝や海藻(かいそう)を取る女性のことです。
夜も更けて 新茶ありしを おもひいづ
【作者】水原秋桜子
【補足】「おもひいづ」は「思い出す」という意味です。
若葉して 命めでたき 新茶かな
【作者】中 勘助(なか かんすけ)
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