空蝉の俳句 20選 -うつせみ-
蝉の抜け殻を意味する「空蝉(うつせみ)」という言葉からは、何ともいえない儚さを感じてしまいます。
源氏物語の第3帖の巻名でもあり、また数多くの俳句作品に季語として詠み込まれているので、古くから馴染みのある言葉ともいえるでしょう。
このページには、空蝉に関する風物が詠み込まれた俳句の中から 20句を選びました。夏ならではの空蝉のある風景が目に浮かぶような作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 空蝉の俳句 20
- 1.1 女の手に 空蝉くだけ ゆきにけり
- 1.2 空蝉に ひとしき人生 吹けばとぶ
- 1.3 空蝉の 死して落たり 樹下の帽
- 1.4 空蝉の ふんばつて居て 壊はれけり
- 1.5 空蝉も 拡大鏡も 子に大事
- 1.6 空蝉や 草のそよぎを 落むとす
- 1.7 空蝉を おしろい匂ふ 抽斗に
- 1.8 空蝉を 風の中にて いつくしむ
- 1.9 空蝉を 子が拾ふ手の 女なる
- 1.10 空蝉を とらんと落す 泉かな
- 1.11 うつせみを とればこぼれぬ 松の膚
- 1.12 空蝉を 林のみちに 拾ひけり
- 1.13 空蝉を ひろふ流人の 墓ほとり
- 1.14 空蝉を 指に縋らせ 寂び乙女
- 1.15 梢より あだに落けり 蝉のから
- 1.16 手に置けば 空蝉風に とびにけり
- 1.17 ぬけがらの 君うつせみの うつゝなや
- 1.18 拾ひたる 空蝉指に すがりつく
- 1.19 無為にして ひがな空蝉 もてあそぶ
- 1.20 葭の風 空蝉水へ 落ちにける
空蝉の俳句 20
「空蝉」「うつせみ」「蝉のから」が詠まれた句を集め、俳句の文字の五十音順に並べました。
なお、これらは俳句において夏の季語として扱われます。
女の手に 空蝉くだけ ゆきにけり
【作者】西東三鬼(さいとう さんき)
空蝉に ひとしき人生 吹けばとぶ
【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)
空蝉の 死して落たり 樹下の帽
【作者】会津八一(あいづ やいち)
【補足】帽(ぼう)は「かぶるもの」の意味です。
空蝉の ふんばつて居て 壊はれけり
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
空蝉も 拡大鏡も 子に大事
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
空蝉や 草のそよぎを 落むとす
【作者】野村喜舟(のむら きしゅう)
【補足】そよぎ(戦ぎ)とは、わずかな揺れ動きのことです。
空蝉を おしろい匂ふ 抽斗に
【作者】波多野爽波(はたの そうは)
【補足】「抽斗」の読み方は「ひきだし(=抽出)」です。
空蝉を 風の中にて いつくしむ
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
【補足】「いつくしむ」は「あわれむ、愛する」という意味です。
空蝉を 子が拾ふ手の 女なる
【作者】後藤夜半(ごとう やはん)
空蝉を とらんと落す 泉かな
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
うつせみを とればこぼれぬ 松の膚
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】「膚」の読み方は「はだ」です。
空蝉を 林のみちに 拾ひけり
【作者】高橋淡路女(たかはし あわじじょ)
空蝉を ひろふ流人の 墓ほとり
【作者】大野林火(おおの りんか)
【補足】「流人」の読み方は「るにん」です。
空蝉を 指に縋らせ 寂び乙女
【作者】三橋鷹女(みつはし たかじょ)
【補足】「縋らせ」の読み方は「すがらせ」です。
梢より あだに落けり 蝉のから
【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)
【補足】「あだに」は「はかなく」という意味です。
手に置けば 空蝉風に とびにけり
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
ぬけがらの 君うつせみの うつゝなや
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】「うつつ」は現実のことで、句末の「や」は詠嘆を表わします。「うつつなや」は「はかなげなことよ」といった意味になります。
拾ひたる 空蝉指に すがりつく
【作者】橋本多佳子(はしもと たかこ)
無為にして ひがな空蝉 もてあそぶ
【作者】川端茅舎(かわばた ぼうしゃ)
【補足】「ひがな」は「ずっと」という意味です。
葭の風 空蝉水へ 落ちにける
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
【補足】「葭」の読み方は「よし、あし(=イネ科の多年草)」です。「葦」「蘆」「芦」とも表記されます。
関 連 ペ ー ジ