12月の俳句 21選 【有名俳人の名作から厳選】
一年も最後の月の12月に入ると、いよいよ今年も終わりかという少し寂しいような気持になってきます。
そして、新年を迎える準備などであわただしく過ごしていると、あっという間に大晦日がやって来てしまいます。
このページには、一年の締めくくりとなる 12月に関連した、「12月の俳句」と呼ぶにふさわしい作品を集めました。12月ならではの雰囲気に満ちたばかりですので、是非ともじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 12月の俳句について
- 2 12月の俳句 21選
- 2.1 いそがしき 冬至の妻の うしろ影
- 2.2 大歳の 暮れゆく雲を 仰ぎけり
- 2.3 汲みたての 水うつくしき 煤払
- 2.4 小気味よき 寒さとなりぬ 年の暮
- 2.5 極月の 人々人々 道にあり
- 2.6 極月の 昼寝の夢の はかなしや
- 2.7 山茶花の 咲きてことしも 師走かな
- 2.8 さむざむと 日輪あそぶ 冬至かな
- 2.9 尻もちを つきてよろこぶ しはす哉
- 2.10 師走の夜の 釣鐘ならす 身となりて
- 2.11 水仙の 香も押合ふや 年の市
- 2.12 月あらむ 櫺子明りを 柚子風呂に
- 2.13 妻はまだ 何かしてをり 除夜の鐘
- 2.14 年の市 何しに出たと 人のいふ
- 2.15 年忘れ 一斗の酒を 尽しけり
- 2.16 長旅の はてのわが家や 年の暮
- 2.17 中々に 心おかしき 臘月哉
- 2.18 仏壇の 菓子うつくしき 冬至かな
- 2.19 ゆく年や 蕎麦にかけたる 海苔の艶
- 2.20 柚子湯出て 老の顔なる 汗やまず
- 2.21 わが家の いづこか除夜の 釘をうつ
12月の俳句について
現代の暦(新暦)の12月の行事や風物が詠まれている句を集め、最初の文字の五十音順に並べました。
ここに集めた俳句の季語はすべて「冬」のものです。
12月の俳句 21選
いそがしき 冬至の妻の うしろ影
【季語】冬至
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】冬至(とうじ)は二十四節気の一つで、「一年のうちで最も昼が短くなる日(=最も夜が長くなる日)」のことです。
大歳の 暮れゆく雲を 仰ぎけり
【季語】大歳
【作者】西島麦南(にしじま ばくなん)
【補足】大歳(おおとし、おおどし)とは、大晦日(おおみそか)のことです。
汲みたての 水うつくしき 煤払
【季語】煤払
【作者】日野草城
【補足】かつては旧暦の 12月13日に大掃除が行なわれていましたが、この由来となるのが煤払(すすはらい)という平安時代に行われていた行事です。
小気味よき 寒さとなりぬ 年の暮
【季語】年の暮
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
【関連】 年の暮れの俳句
極月の 人々人々 道にあり
【季語】極月
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
【補足】極月(ごくげつ)とは 12月の異名です。他にも、後述の師走(しわす)をはじめとして、晩冬(ばんとう)、氷月(ひょうげつ)など様々な別名があります。
極月の 昼寝の夢の はかなしや
【季語】極月
【作者】日野草城
山茶花の 咲きてことしも 師走かな
【季語】師走、山茶花(さざんか)
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
【補足】師走(しわす)は旧暦の 12月の呼び名です。
師走の名前の由来として、「師(=僧侶の意)が走るほど忙しい」という説があります。しかし、これは民間語源(言語学的に根拠がないもの)であるとされています。
さむざむと 日輪あそぶ 冬至かな
【季語】冬至
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
【補足】日輪(にちりん)とは太陽のことです。また、月は月輪(がちりん)といいます。いずれも輪(わ)のように丸いことから名付けられたものです。
尻もちを つきてよろこぶ しはす哉
【季語】しはす
【作者】北村季吟(きたむら きぎん)
師走の夜の 釣鐘ならす 身となりて
【季語】師走
【作者】尾崎放哉(おざき ほうさい)
【補足】晩年の放哉は、瀬戸内海の小豆島で寺男としての生活を送りました。
水仙の 香も押合ふや 年の市
【季語】年の市
【作者】加賀千代女(かがのちよじょ)
【補足】年の市は年末にお正月飾りなどを売り出す市で、歳の市、暮の市ともいわれます。
月あらむ 櫺子明りを 柚子風呂に
【季語】柚子風呂
【作者】臼田亞浪(うすだ あろう)
【補足】冬至の日の柚子風呂(ゆずぶろ)は江戸時代の銭湯から流行したといわれています。柚子湯(ゆずゆ)、冬至風呂ともよばれています。
櫺子(れんじ)とは、窓や戸などに取り付ける格子のことです。
妻はまだ 何かしてをり 除夜の鐘
【季語】除夜の鐘
【作者】日野草城
【関連】 除夜の鐘の俳句
年の市 何しに出たと 人のいふ
【季語】年の市
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
年忘れ 一斗の酒を 尽しけり
【季語】年忘れ
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】一斗(いっと)は、約 18リットルに相当します。
長旅の はてのわが家や 年の暮
【季語】年の暮れ
【作者】久保田万太郎
中々に 心おかしき 臘月哉
【季語】臘月
【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)
【補足】臘月(ろうげつ)も 12月の別名で、臈月、﨟月と表記されることもあります。
仏壇の 菓子うつくしき 冬至かな
【季語】冬至
【作者】正岡子規
ゆく年や 蕎麦にかけたる 海苔の艶
【季語】ゆく年
【作者】久保田万太郎
【補足】「蕎麦」「海苔の艶」の読み方は、それぞれ「そば」「のりのつや」です。
柚子湯出て 老の顔なる 汗やまず
【季語】柚子湯
【作者】皆吉爽雨(みなよし そうう)
わが家の いづこか除夜の 釘をうつ
【季語】除夜
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
【補足】除夜(じょや)は大晦日の夜のことをいいます。
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