「秋の夜」の俳句 70選 -あきのよる- 【有名俳人の名作から厳選】
夜長という言葉もあるように、静かな秋の夜は何をするにも適しているように思われます。
この「秋の夜」は、俳句においては秋の季語として多くの俳人が取り上げ、数多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、季語「秋の夜」が詠まれた俳句を数多く集めてみました。秋特有の寂しさも感じられる雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 「秋の夜」の俳句 70選
- 1.1 秋の夜の 熱き饂飩の 渦白き
- 1.2 秋の夜の 雨すふ街を 見てひとり
- 1.3 秋の夜の 憤ろしき 何々ぞ
- 1.4 秋の夜の 薄闇に逢うて 異邦人
- 1.5 秋の夜の うつしゑ常に われに向く
- 1.6 秋の夜の 海かき回し 出帆す
- 1.7 秋の夜の 奥行ふかき 狭斜の燈
- 1.8 秋の夜の オリオン低し 胸の上
- 1.9 秋の夜の 影絵をうつす 褥かな
- 1.10 秋の夜の からくりの頸 鳴れりけり
- 1.11 秋の夜の 子が聞く受験 講座憂し
- 1.12 秋の夜の 深沈と寝て 妻子かな
- 1.13 秋の夜の 膳に坐りて みな幼な
- 1.14 秋の夜の タイプライター 鏘々と
- 1.15 秋の夜の 地下にうつむき 皿洗ふ
- 1.16 秋の夜の 妻に怒りて 子を憚る
- 1.17 秋の夜の 時計に時計 合せ寝る
- 1.18 秋の夜の 流れ藻岸を うちにけり
- 1.19 秋の夜の 寝すがたうつす 鏡かな
- 1.20 秋の夜の 博多人形 賑やかに
- 1.21 秋の夜の 一つの椅子と バレリーナ
- 1.22 秋の夜の 人なつこさの 焼林檎
- 1.23 秋の夜の 燐寸の火色 さす畳
- 1.24 秋の夜の 身になれそめし 衾かな
- 1.25 秋の夜の 山に灯二つ 見つけたり
- 1.26 秋の夜の 路銀かぞふる ふしどかな
- 1.27 秋の夜は 剃刀の刃が くすりと嗤ふ
- 1.28 秋の夜も そぞろに雲の 光りかな
- 1.29 秋の夜や あまへ泣き居る どこかの子
- 1.30 秋の夜や インク足したる インク壺
- 1.31 秋の夜や 紅茶をくゞる 銀の匙
- 1.32 秋の夜や 書淫まさしく 子に伝はり
- 1.33 秋の夜や せうじの穴が 笛を吹
- 1.34 秋の夜や たのしみて書く 文長し
- 1.35 秋の夜や 旅の男の 針仕事
- 1.36 秋の夜や 隣を始 しらぬ人
- 1.37 秋の夜や 鳥目をためす 石拾ひ
- 1.38 秋の夜や 話の糸の ほぐれのび
- 1.39 秋の夜や 掘る穴の底に 水ありき
- 1.40 秋の夜や 水に音たて 舟住居
- 1.41 秋の夜や 病めば一途に 人恋し
- 1.42 秋の夜を あはれ田守の 鼓かな
- 1.43 秋の夜を 打崩したる 咄かな
- 1.44 秋の夜を 生れて間なき ものと寝る
- 1.45 秋の夜を 水のごとくに 貫くもの
- 1.46 秋の夜を 薬師如来に ともしけり
- 1.47 うか~と ふかして秋の 夜なりけり
- 1.48 鏡見て しばしをとめや 秋の夜
- 1.49 掛け馴れし 古籐椅子や 秋の夜
- 1.50 肩肘や 秋の夜近き いなびかり
- 1.51 暗けれど 汽車はよろしも 秋の夜
- 1.52 子にみやげ なき秋の夜の 肩車
- 1.53 このセルを 著て秋の日に 秋の夜に
- 1.54 今晩は 今晩は秋の 夜の漁村
- 1.55 水亭の 秋の夜を来る 白蛾かな
- 1.56 すこしある 熱のしたしさ 秋の夜
- 1.57 住むかたの 秋の夜遠き 灯影哉
- 1.58 大正の まへの明治の 秋の夜ぞ
- 1.59 でこぼこの 鍋なつかしや 秋の夜
- 1.60 土堤行く燈 水にも遅き 秋の夜
- 1.61 どの道も 秋の夜白し 草の中
- 1.62 波懈き ひかりも秋の 夜光虫
- 1.63 鼠追ふも 秋の夜長の すさびかな
- 1.64 ひとり寝の 身のぬくもりや 秋の夜
- 1.65 鰭酒に 旅の秋の夜 ぬくきかな
- 1.66 舞の面 われに向くとき 秋の夜
- 1.67 目をとぢて 秋の夜汽車は すれちがふ
- 1.68 モルヒネも 利かで悲しき 秋の夜や
- 1.69 夜の秋は すでに秋の夜 高野山
- 1.70 ランランと 秋の夜告ぐる 古時計
「秋の夜」の俳句 70選
秋の季語である「秋の夜」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
秋の夜の 熱き饂飩の 渦白き
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】「饂飩」の読み方は「うどん」です。
秋の夜の 雨すふ街を 見てひとり
【作者】横山白虹(よこやま はっこう)
秋の夜の 憤ろしき 何々ぞ
【作者】石田波郷(いしだ はきょう)
【補足】「憤ろしき」の読み方は「いきどおろしき」です。
秋の夜の 薄闇に逢うて 異邦人
【作者】日野草城
秋の夜の うつしゑ常に われに向く
【作者】桂 信子(かつら のぶこ)
【補足】「うつしゑ(写し絵)」は、「影絵(かげえ)、幻燈、写真」を意味します。
秋の夜の 海かき回し 出帆す
【作者】西東三鬼(さいとう さんき)
【補足】「出帆」の読み方は「しゅっぱん」です。
秋の夜の 奥行ふかき 狭斜の燈
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
【補足】狭斜(きょうしゃ)とは、花柳界(かりゅうかい=芸妓などの社会)の異名です。
秋の夜の オリオン低し 胸の上
【作者】石田波郷
秋の夜の 影絵をうつす 褥かな
【作者】芝不器男(しば ふきお)
【補足】褥(しとね)とは、いわゆる「ふとん」や寝たり座ったりするときの敷物のことをいいます。
秋の夜の からくりの頸 鳴れりけり
【作者】岸田稚魚(きしだ ちぎょ) (八女の燈籠人形)
【補足】「頸」の読み方は「くび(=首)」です。
秋の夜の 子が聞く受験 講座憂し
【作者】相馬遷子(そうま せんし)
【補足】「憂し(うし)」とは、「つらい、せつない、いやだ」といった感じを表現します。
秋の夜の 深沈と寝て 妻子かな
【作者】石塚友二(いしづか ともじ)
【補足】深沈(しんちん)とは、夜がふけてゆく様子や物音がしない様子を表します。
秋の夜の 膳に坐りて みな幼な
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
秋の夜の タイプライター 鏘々と
【作者】日野草城
【補足】「鏘鏘(そうそう)」は、金属などが触れ合って鳴る音を表現するときに使われる言葉です。
秋の夜の 地下にうつむき 皿洗ふ
【作者】西東三鬼
秋の夜の 妻に怒りて 子を憚る
【作者】日野草城
【補足】「憚る」の読み方は「はばかる(=遠慮する)」です。
秋の夜の 時計に時計 合せ寝る
【作者】波多野爽波(はたの そうは)
秋の夜の 流れ藻岸を うちにけり
【作者】萩原麦草(はぎわら ばくそう)
秋の夜の 寝すがたうつす 鏡かな
【作者】西島麦南(にしじま ばくなん)
秋の夜の 博多人形 賑やかに
【作者】松村蒼石(まつむら そうせき)
【補足】博多人形(はかたにんぎょう)は福岡の伝統工芸品の一つで、素焼きの土人形です。
博多人形の「猩々(しょうじょう)」
秋の夜の 一つの椅子と バレリーナ
【作者】石田波郷
【補足】「椅子」の読み方は「いす」です。
秋の夜の 人なつこさの 焼林檎
【作者】永井龍男(ながい たつお)
秋の夜の 燐寸の火色 さす畳
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
【補足】「燐寸」の読み方は「マッチ」です。
秋の夜の 身になれそめし 衾かな
【作者】西島麦南
【補足】「衾」の読み方は「ふすま」です。
秋の夜の 山に灯二つ 見つけたり
【作者】金尾梅の門(かなお うめのかど)
秋の夜の 路銀かぞふる ふしどかな
【作者】西島麦南
【補足】路銀(ろぎん)とは、旅費のことです。
秋の夜は 剃刀の刃が くすりと嗤ふ
【作者】三橋鷹女(みつはし たかじょ)
【補足】「剃刀」「嗤ふ」の読み方は、それぞれ「かみそり」「わらう」です。
秋の夜も そぞろに雲の 光りかな
【作者】加藤暁台(かとう きょうたい)
秋の夜や あまへ泣き居る どこかの子
【作者】杉田久女(すぎた ひさじょ)
秋の夜や インク足したる インク壺
【作者】鈴木真砂女(すずき まさじょ)
秋の夜や 紅茶をくゞる 銀の匙
【作者】日野草城
【補足】「匙」の読み方は「さじ」です。
秋の夜や 書淫まさしく 子に伝はり
【作者】平畑静塔(ひらはた せいとう)
【補足】書淫(しょいん)とは、読書にふけること、またその人のことをいいます。
秋の夜や せうじの穴が 笛を吹
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【補足】「せうじ」は「しょうじ(障子)」です。
秋の夜や たのしみて書く 文長し
【作者】日野草城
秋の夜や 旅の男の 針仕事
【作者】小林一茶
秋の夜や 隣を始 しらぬ人
【作者】小林一茶
秋の夜や 鳥目をためす 石拾ひ
【作者】富田木歩(とみた もっぽ)
【補足】鳥目(とりめ)とは、夜になると(鳥のように)目がみえなくなる目の障害のことです。
秋の夜や 話の糸の ほぐれのび
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
秋の夜や 掘る穴の底に 水ありき
【作者】横光利一(よこみつ りいち)
秋の夜や 水に音たて 舟住居
【作者】後藤夜半(ごとう やはん)
【補足】「舟住居」の読み方は「ふなずまい」です。
秋の夜や 病めば一途に 人恋し
【作者】菖蒲あや(しょうぶ あや)
【補足】一途(いちず)は、「ひたすら、ひたむき」と同義です。
秋の夜を あはれ田守の 鼓かな
【作者】黒柳召波(くろやなぎ しょうは)
【補足】田守(たもり)とは、田畑の管理役の職名で、室町時代に設置されました。「鼓」の読み方は「つづみ」です。
秋の夜を 打崩したる 咄かな
【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)
【補足】「咄」の読み方は「はなし」です。
秋の夜を 生れて間なき ものと寝る
【作者】山口誓子
秋の夜を 水のごとくに 貫くもの
【作者】富安風生
秋の夜を 薬師如来に ともしけり
【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)
【補足】薬師如来(やくしにょらい)は、衆生(しゅじょう=生命のあるすべてのもの)の病患を救うという如来(=仏をたたえて呼ぶ称号)です。
うか~と ふかして秋の 夜なりけり
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
鏡見て しばしをとめや 秋の夜
【作者】山口誓子
掛け馴れし 古籐椅子や 秋の夜
【作者】日野草城
【補足】「籐椅子」の読み方は「とういす」です。
肩肘や 秋の夜近き いなびかり
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
暗けれど 汽車はよろしも 秋の夜
【作者】山口誓子
子にみやげ なき秋の夜の 肩車
【作者】能村登四郎(のむら としろう)
このセルを 著て秋の日に 秋の夜に
【作者】高野素十(たかの すじゅう)
【補足】セルは和服用の生地(きじ)の一つです。「著て」の読み方は「きて(=着て)」です。
今晩は 今晩は秋の 夜の漁村
【作者】山口誓子
水亭の 秋の夜を来る 白蛾かな
【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)
【補足】水亭(すいてい)とは、水辺にある建物のことをいいます。「白蛾」の読み方は「しろが」です。
すこしある 熱のしたしさ 秋の夜
【作者】日野草城
住むかたの 秋の夜遠き 灯影哉
【作者】与謝蕪村(よさ ぶそん)
【補足】「灯影」の読み方は「ほかげ」です。句末の「哉(かな)」は詠嘆を表します。
大正の まへの明治の 秋の夜ぞ
【作者】久保田万太郎
でこぼこの 鍋なつかしや 秋の夜
【作者】横光利一
土堤行く燈 水にも遅き 秋の夜
【作者】山口誓子
【補足】「土堤」「燈」の読み方は、」それぞれ「どて」「ひ」です。
どの道も 秋の夜白し 草の中
【作者】渡辺水巴(わたなべ すいは)
波懈き ひかりも秋の 夜光虫
【作者】篠田悌二郎(しのだ ていじろう)
【補足】「懈き」の読み方は「だるき、たゆき」です。
鼠追ふも 秋の夜長の すさびかな
【作者】尾崎紅葉(おざき こうよう)
【補足】「鼠」の読み方は「ねずみ」です。「すさび(遊び)」とは、心のおもむくままにするなぐさみのとこをいいます、
ひとり寝の 身のぬくもりや 秋の夜
【作者】飯田蛇笏(いいだ だこつ)
鰭酒に 旅の秋の夜 ぬくきかな
【作者】長谷川かな女(はせがわ かなじょ)
【補足】鰭酒(ひれざけ)とは、魚のヒレをあぶったものを入れた酒のことです。
舞の面 われに向くとき 秋の夜
【作者】西東三鬼
目をとぢて 秋の夜汽車は すれちがふ
【作者】中村汀女
モルヒネも 利かで悲しき 秋の夜や
【作者】尾崎紅葉
【補足】モルヒネは、強い鎮痛作用を持った薬品です。「利かで(きかで)」は「効かないで」の意です。
夜の秋は すでに秋の夜 高野山
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【補足】高野山(こうやさん)は、和歌山県北部の地域の名称で、高野山という名の山はありません。
ランランと 秋の夜告ぐる 古時計
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
【補足】「告ぐる」の読み方は「つぐる」です。
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