「氷水」「かき氷」「夏氷」の俳句 50選 -こおりみず、かきごおり、なつごおり-
暑い夏の盛りに、かき氷を一口ずつすくって食べて涼しさをとるのは、格別に楽しいものです。
「かき氷」は「氷水」「夏氷」等とも呼ばれ、これらは俳句において夏の季語でもあり、数多くの俳人によって多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、「氷水」「かき氷」「夏氷」が詠まれた俳句を多く集めました。真夏らしい雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 「氷水」「かき氷」「夏氷」の俳句 50選
- 1.1 荒々しき 男同士や 氷水
- 1.2 一団は 八月大名 かき氷
- 1.3 一本の 木もなき街の 氷水
- 1.4 祈りたる 神の多度村 氷水
- 1.5 彩るに 紅の険しき 氷水
- 1.6 陰湿に 電気鋸 夏氷
- 1.7 かき氷 粗きを契し 湖北なる
- 1.8 かき氷 哀し風紋の 変幻に
- 1.9 かき氷 食ひ桔梗の 花を見る
- 1.10 かき氷 ほろと崩れて 美濃にあり
- 1.11 掻き氷 水にもどりし 役者かな
- 1.12 かき氷 胸元深く 食ひこぼす
- 1.13 象潟の 厩浮雲 かき氷
- 1.14 今日ぎりに なりし祭や 氷水
- 1.15 傾城の 噛み砕きけり 夏氷
- 1.16 氷水 いたこの席に とどきけり
- 1.17 氷水 きて緋毛氈の 端濡らす
- 1.18 氷水 魚臭の中に うまかりし
- 1.19 氷水 これくらゐにして 安達ヶ原
- 1.20 氷水 牀几にくづす 褄がしら
- 1.21 氷水 とがれる肩を それとのみ
- 1.22 氷水 花なき瓶を かたほとり
- 1.23 氷水 夜の映画は 始まれり
- 1.24 こころよく 天橋撓む 氷水
- 1.25 匙なめて 童たのしも 夏氷
- 1.26 三尺の 鯛生きてあり 夏氷
- 1.27 しばらくは 死人なかりし 氷水
- 1.28 少女ふと おのれにこもり 氷水
- 1.29 少しづつ 飲んでなくなる 氷水
- 1.30 青春の いつかな過ぎて 氷水
- 1.31 食べ残る 頃に色よき 掻き氷
- 1.32 夏氷 童女の掌にて とけやまず
- 1.33 夏氷 鋸荒く ひきにけり
- 1.34 奈良の樹々 隙間かゞやく 掻き氷
- 1.35 俳諧は さびしや薬缶の 氷水
- 1.36 初めての 老もやゝ過ぎ 氷水
- 1.37 母棲んで しんかんたりや 氷水
- 1.38 はらわたの ひしとつめたし 氷水
- 1.39 冷えわたる 五臓六腑や 氷水
- 1.40 一匙の 脳天衝けり 夏氷
- 1.41 人妻と 刻をつひやす 氷水
- 1.42 日焼顔 見合ひてうまし 氷水
- 1.43 冨士の雪 見なからくふや 夏氷
- 1.44 町走る 人見ゆわれは 氷水
- 1.45 水差に かちんかちんと 夏氷
- 1.46 むづかしき 碑林より先づ かき氷
- 1.47 門前の 店や樒と 氷水
- 1.48 ゆきすぎて 戻るバスあり 氷水
- 1.49 佳き酒の 舌にころぶよ 夏氷
- 1.50 冷淡な 頭の形 氷水
「氷水」「かき氷」「夏氷」の俳句 50選
「氷水」「かき氷」「夏氷」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
荒々しき 男同士や 氷水
【作者】村山古郷(むらやま こきょう)
一団は 八月大名 かき氷
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
【補足】農家にとって 8月は労働をあまり必要とせず、気楽な月であることから、「八月大名(はちがつだいみょう)」という言葉が生まれました。
一本の 木もなき街の 氷水
【作者】細見綾子(ほそみ あやこ)
祈りたる 神の多度村 氷水
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
【補足】多度村(たどむら)は、三重県の北部に位置していましたが廃止されました。
彩るに 紅の険しき 氷水
【作者】上田五千石(うえだ ごせんごく)
陰湿に 電気鋸 夏氷
【作者】百合山羽公
【補足】「電気鋸」の読み方は「でんきのこぎり」です。
かき氷 粗きを契し 湖北なる
【読み】かきごおり あらきをきざみし こほくなる
【作者】亀井糸游(かめい しゆう)
【補足】湖北(こほく)とは、琵琶湖の北東部に広がる地域の呼び名です。
かき氷 哀し風紋の 変幻に
【作者】伊丹公子(いたみ きみこ)
【補足】風紋(ふうもん)とは、風によって砂地などの表面にできる模様のことをいいます。
かき氷 食ひ桔梗の 花を見る
【作者】田中裕明(たなか ひろあき)
かき氷 ほろと崩れて 美濃にあり
【作者】藤田あけ烏(ふじた あけがらす)
掻き氷 水にもどりし 役者かな
【作者】橋 閒石(はし かんせき)
かき氷 胸元深く 食ひこぼす
【作者】右城暮石(うしろ ぼせき)
象潟の 厩浮雲 かき氷
【作者】斉藤夏風(さいとう かふう)
【補足】象潟(きさかた)は、秋田南部の地名です。厩(うまや)とは、馬を飼っておく小屋(=馬小屋)のことです。
今日ぎりに なりし祭や 氷水
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
傾城の 噛み砕きけり 夏氷
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】傾城(けいせい)とは遊女のことで、「傾国(けいこく)」ということもあります。
氷水 いたこの席に とどきけり
【作者】皆川盤水(みなかわ ばんすい)
【補足】「いたこ」とは、東北地方の北部で口寄せを行う巫女(みこ)のことです。
氷水 きて緋毛氈の 端濡らす
【作者】石川桂郎(いしかわ けいろう)
【補足】緋毛氈(ひもうせん)とは、赤い色の毛氈(=敷物用の毛織物)のことです。
氷水 魚臭の中に うまかりし
【作者】瀧 春一(たき しゅんいち)
氷水 これくらゐにして 安達ヶ原
【作者】飯島晴子(いいじま はるこ)
【補足】安達ヶ原(あだちがはら)は、福島にある地名です。
氷水 牀几にくづす 褄がしら
【作者】石橋秀野(いしばし ひでの)
【補足】牀几(しょうぎ=床几)は、腰かけの一種です。
褄(つま)とは、和服の衽(おくみ:左右にある襟から下の半幅の布)の腰から下のへりの部分です。
氷水 とがれる肩を それとのみ
【作者】石橋秀野
氷水 花なき瓶を かたほとり
【作者】石橋秀野
氷水 夜の映画は 始まれり
【作者】山口誓子
こころよく 天橋撓む 氷水
【作者】山口誓子
【補足】「撓む」の読み方は「たわむ」です。
匙なめて 童たのしも 夏氷
【読み】さじなめて わらべたのしも なつごおり
【作者】山口誓子
三尺の 鯛生きてあり 夏氷
【作者】正岡子規
【補足】三尺(さんじゃく)は、約 90センチメートルです。
しばらくは 死人なかりし 氷水
【作者】永田耕衣(ながた こうい)
少女ふと おのれにこもり 氷水
【作者】鍵和田釉子(かぎわだ ゆうこ)
少しづつ 飲んでなくなる 氷水
【作者】桂 信子(かつら のぶこ)
青春の いつかな過ぎて 氷水
【作者】上田五千石
食べ残る 頃に色よき 掻き氷
【作者】土生重次(はぶ じゅうじ)
夏氷 童女の掌にて とけやまず
【作者】橋本多佳子(はしもと たかこ)
【補足】「掌」の読み方は「て(≒手)」です。
夏氷 鋸荒く ひきにけり
【作者】川端茅舎(かわばた ぼうしゃ)
奈良の樹々 隙間かゞやく 掻き氷
【作者】右城暮石
俳諧は さびしや薬缶の 氷水
【作者】藤田あけ烏
【補足】「薬缶」の読み方は「やかん」です。
初めての 老もやゝ過ぎ 氷水
【作者】山口誓子
母棲んで しんかんたりや 氷水
【作者】清水基吉(しみず もとよし)
【補足】「しんかん(深閑、森閑)」とは、物音がしないで、ひっそりと静まりかえっている様子をいいます。
はらわたの ひしとつめたし 氷水
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
冷えわたる 五臓六腑や 氷水
【作者】日野草城
【補足】五臓六腑(ごぞうろっぷ)とは、「腹の中すべて」「からだ全体」を意味します。
一匙の 脳天衝けり 夏氷
【作者】能村登四郎(のむら としろう)
【補足】「衝けり」の読み方は「つけり」です。
人妻と 刻をつひやす 氷水
【作者】上田五千石
【補足】「刻」の読み方は「とき」です。
日焼顔 見合ひてうまし 氷水
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
冨士の雪 見なからくふや 夏氷
【作者】正岡子規
町走る 人見ゆわれは 氷水
【作者】正岡子規
水差に かちんかちんと 夏氷
【作者】日野草城
むづかしき 碑林より先づ かき氷
【作者】有馬朗人(ありま あきと)
【補足】碑林(ひりん)とは、中国で古い石碑や刻石を集めて立ててあるもののことです。
門前の 店や樒と 氷水
【作者】正岡子規
【補足】樒(しきみ)は、マツブサ科の常緑性小高木・高木です。
ゆきすぎて 戻るバスあり 氷水
【作者】石橋秀野
佳き酒の 舌にころぶよ 夏氷
【作者】石川桂郎
冷淡な 頭の形 氷水
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
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