有名な俳句・厳選30の「一覧」 【永久保存版】
俳句というものは不思議なもので、気に入っている句は何かの拍子に、ふいに口から出てくることがあります。つまり、覚えようと意識しなくても、いつの間にか頭に入っているような気がします。
このページには、俳句の中でも特に有名な句を集めてみました。これらは、いずれもが「これは知っている!」と言いたくなるような名作や名句ばかりです。あらためて、これらから俳句の素晴らしさを味わってみて下さい。
目次
- 1 有名な俳句について
- 2 有名な俳句 30選
- 2.1 赤い椿 白い椿と 落ちにけり
- 2.2 秋深き 隣は何を する人ぞ
- 2.3 朝顔に つるべとられて もらい水
- 2.4 荒海や 佐渡に横たふ 天の川
- 2.5 うまさうな 雪がふうはり ふわりかな
- 2.6 梅一輪 一輪ほどの あたたかさ
- 2.7 柿くえば 鐘が鳴るなり 法隆寺
- 2.8 行水の 捨てどころなし 虫の声
- 2.9 鶏頭(けいとう)の 十四五本も ありぬべし
- 2.10 これがまあ 終(つい)のすみかか 雪五尺
- 2.11 五月雨を 集めてはやし 最上川
- 2.12 さらさらと 竹に音あり 夜の雪
- 2.13 閑(しず)かさや 岩にしみ入る 蝉の声
- 2.14 しばらくは 花の上なる 月夜かな
- 2.15 すずめの子 そこのけそこのけ お馬が通る
- 2.16 旅に病(や)んで 夢は枯(か)れ野を かけめぐる
- 2.17 遠山に 日の当たりたる 枯野かな
- 2.18 夏草や つわものどもが 夢の跡
- 2.19 菜の花や 月は東に 日は西に
- 2.20 ねぎ白く 洗ひたてたる 寒さかな
- 2.21 春の海 ひねもすのたり のたりかな
- 2.22 古池や 蛙(かわず)とびこむ 水の音
- 2.23 名月や 池をめぐりて 夜もすがら
- 2.24 名月を とってくれろと 泣く子かな
- 2.25 目には青葉 山ほととぎす 初がつお
- 2.26 やせ蛙(がえる) 負けるな一茶 これにあり
- 2.27 やれ打つな はえが手をする 足をする
- 2.28 夕立や 草葉をつかむ むら雀
- 2.29 雪とけて 村一ぱいの 子どもかな
- 2.30 をととひの へちまの水も 取らざりき
有名な俳句について
- 一般的に「有名」「名作、名句」といわれ、評価が高い俳句を中心に選びました。
- 選んだ俳句の作者は、いずれも有名な俳人ばかりです。
- 並んでいる順番は、俳句の先頭の文字の五十音順です。
- 複数の解釈がされている句には、【意味 1】【意味 2】など二つ以上の解釈を挙げたものがあります。
- 【意味】には、必要最小限の直訳的な現代口語訳を記しました。
有名な俳句 30選
赤い椿 白い椿と 落ちにけり
【意味 1】赤い椿、白い椿(の花が)落ちて(広がって)いるなあ… [落ちた後の状態]
【意味 2】赤い椿、白い椿(の順に花が)落ちてゆくなあ… [今、落ちている状態]
【作者】 河東碧梧桐(かわひがし へきごとう)
【季語 / 季節】椿 / 春
【補足】碧梧桐は正岡子規(まさおか しき)から俳句を学びました。
高浜虚子(中学時代の同級生)と並んで正岡子規の高弟(こうてい=弟子のなかでも特に優れた者)と称されました。
従来の五七五の定型にとらわれない自由な俳句(新傾向俳句)を推進したことで有名です。
秋深き 隣は何を する人ぞ
【意味】秋は深まってきた。隣の人は何をしているのだろうか…
【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)
【季語 / 季節】秋深き / 秋
【補足】芭蕉は俳聖(はいせい)と称されますが、俳句(発句)よりも連句(俳諧)を好んだといわれています。
【関連】 松尾芭蕉の俳句
朝顔に つるべとられて もらい水
【意味】朝顔につるべを取られて(しまって)もらい水(をしました)…
【作者】加賀千代女(かがのちよじょ)
【季語 / 季節】朝顔 / 秋
【補足】「つるべ(釣瓶)」は、井戸の水を汲み上げるための桶(おけ)です。
千代女には、朝顔について歌った句が多くあります。
あさがほや まだ灯火の 薄明り
朝顔や 宵から見ゆる 花のかず
【関連】 加賀千代女の俳句 100選
荒海や 佐渡に横たふ 天の川
【意味】荒海… 佐渡(の方角)に横たわっている天の川…
【作者】松尾芭蕉
【季語 / 季節】天の川 / 秋
【補足】「横たふ」は「横たわる」の意味です。
うまさうな 雪がふうはり ふわりかな
【意味】うまそうな雪が「ふうわり ふわり」と(落ちて来る)…
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【季語 / 季節】雪 / 冬
【補足】一茶は約22,000もの句を作りましたが、その数は芭蕉(約1,000句)、蕪村(約3,000句)らと比較しても群を抜いています。
梅一輪 一輪ほどの あたたかさ
【意味 1】梅が一輪(咲いた)… (その)一輪分の暖かさが(少しながらも感じられるようだ)…
【意味 2】梅が一輪、一輪と咲くにつれて暖かさが(徐々に感じられるようだ)…
【作者】服部嵐雪(はっとり らんせつ)
【季語 / 季節】梅 / 春
【補足】嵐雪は、芭蕉の高弟といわれています。
柿くえば 鐘が鳴るなり 法隆寺
【意味】柿を食べたら(ちょうど)鐘が鳴った、法隆寺の(鐘が)…
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【季語 / 季節】柿 / 秋
【補足】子規は生涯で20万以上の句を詠みました。
【関連】 正岡子規の俳句
行水の 捨てどころなし 虫の声
【意味】行水の(残り水を)捨てる場所がない、虫の声(がするので)…
【作者】上島鬼貫(うえじま おにつら)
【季語 / 季節】虫 / 秋 (「行水」は夏)
【補足】鬼貫は芭蕉とも交流がありました。
鶏頭(けいとう)の 十四五本も ありぬべし
【意味 1】鶏頭の花が(見えるが) 14、5本もあるのだろうか…
【意味 2】(私はまだ見ていないが、今年も)鶏頭は 14、5本も咲いているのだろうか…
【作者】正岡子規
【季語 / 季節】鶏頭 / 秋
【補足】鶏頭は、花の形状がニワトリの鶏冠(とさか)に似ていることから名付けられました。
この句をめぐっては「鶏頭論争」といわれる論争が起こりました。
これがまあ 終(つい)のすみかか 雪五尺
【意味】これがまあ、最後の家(になるの)か… 雪が五尺(ほど積もっている)…
【作者】小林一茶
【季語 / 季節】雪 / 冬
【補足】五尺は約1.5メートルです。「終の」は「終りの、最後の」の意味です。
五月雨を 集めてはやし 最上川
【意味】五月雨を集めて早い(流れとなった)最上川(もがみがわ)…
【作者】松尾芭蕉
【季語 / 季節】五月雨 / 夏
【補足】五月雨(さみだれ)とは、旧暦の 5月頃に降る長雨のことをいいます。
さらさらと 竹に音あり 夜の雪
【意味】さらさらと竹に(当たる)音がする、夜の雪(が)…
【作者】正岡子規
【季語 / 季節】雪 / 冬
閑(しず)かさや 岩にしみ入る 蝉の声
【意味】(この)静けさ… 岩に浸み入る(ような)蝉の声…
【作者】松尾芭蕉
【季語 / 季節】蝉 / 夏
【補足】この句は、芭蕉が出羽国(でわのくに、現在の山形市)の立石寺(りっしゃくじ)に参詣したときに詠んだもので、『奥の細道』に収録されています。
しばらくは 花の上なる 月夜かな
【意味】しばらくは、花の上に月がある今夜…
【作者】松尾芭蕉
【季語 / 季節】「花」は春の季語、「月夜」は秋の季語なので、異季の季重なりの句ということができます。
すずめの子 そこのけそこのけ お馬が通る
【意味】雀の子よ、そこをどけ(早く)どけ、お馬が通るよ
【作者】小林一茶
【季語 / 季節】すずめの子 / 春
【補足】一茶は、この句のように小動物について詠んだ句を多く残しています。
旅に病(や)んで 夢は枯(か)れ野を かけめぐる
【意味】旅(の途中)で病にかかり、夢(の中)で(私は)枯野をかけめぐっている
【作者】松尾芭蕉
【季語 / 季節】枯れ野 / 冬
【補足】この句は「病中吟」と称されていて、松尾芭蕉の辞世の句といわれています。芭蕉は病の床で「なほかけ廻る夢心」、「枯野を廻るゆめ心」などとすべきか推敲を重ねたといわれています。
遠山に 日の当たりたる 枯野かな
【意味】遠くに見える山に日が当たっていて、(あたりに広がっている)枯野が…
【作者】高浜虚子
【季語 / 季節】枯野 / 冬
【補足】前出の河東碧梧桐と高浜虚子は「子規門下の双璧」といわれていました。
【関連】 高浜虚子の俳句
夏草や つわものどもが 夢の跡
【意味】夏草… (その昔の)武士たちの夢の跡…
【作者】松尾芭蕉
【季語 / 季節】夏草 / 夏
【補足】「つわもの」は、とても強い武士たちのことをいいます。
菜の花や 月は東に 日は西に
【意味】菜の花… 月は東に(昇って)、日は西に(沈んでゆく)…
【作者】与謝蕪村(よさ ぶそん)
【季語 / 季節】菜の花 / 春
【補足】蕪村は数多くの俳画(絵画)も残していて、創作した俳句が絵画的と評されることも多くあります。
【関連】 与謝蕪村の俳句
ねぎ白く 洗ひたてたる 寒さかな
【意味】ねぎを(泥を落とし)白く洗いたてる(=よく洗う)と、寒さ(が一層)…
【作者】松尾芭蕉
【季語 / 季節】ねぎ(葱) / 冬
【補足】この句は、美濃の国の本龍寺でつくられたといわれています。
春の海 ひねもすのたり のたりかな
【意味】春の海… 一日中、のたりのたり(と)…
【作者】与謝蕪村
【季語 / 季節】春の海 / 春
【補足】「ひねもす」は、「終日、一日中」という意味です。
古池や 蛙(かわず)とびこむ 水の音
【意味】古池… 蛙が飛び込んだ(ようだ)、水の音(が)…
【作者】松尾芭蕉
【季語 / 季節】蛙 / 春
【補足】俳諧集『庵桜(いおざくら)』には、芭蕉の句として「古池や 蛙飛ンだる 水の音」が収録されています。
名月や 池をめぐりて 夜もすがら
【意味 1】池に映る中秋の名月を眺めながら、一晩中池の周りを歩いた
【意味 2】空にある中秋の名月を眺めながら、一晩中池の周りを歩いた
【意味 3】中秋の名月が、一晩かけて池の周りを移動していく
【作者】松尾芭蕉
【季語 / 季節】名月 / 秋
【補足】「夜もすがら」は漢字で「終夜」と書き、夜通しを意味します。
名月を とってくれろと 泣く子かな
【意味】(今夜の)名月を「取ってくれ」と泣く子…
【作者】小林一茶
【季語 / 季節】名月 / 秋
【補足】「とってくれろ」とは、「とって欲しい」の意です。
一茶は、小動物の他に、子供について詠んだ句も数多く残しています。
目には青葉 山ほととぎす 初がつお
【意味】目には青葉(が映り)… 山にはホトトギス… (そして)初鰹(が出回っている)…
【作者】山口素堂(やまぐち そどう)
【季語 / 季節】青葉、山ほととぎす、初がつお / いずれも夏
【補足】素堂は松尾芭蕉と親しい交流がありました。
【関連】 山口素堂の俳句
やせ蛙(がえる) 負けるな一茶 これにあり
【意味】やせ蛙よ、負けるな。一茶がここにいるぞ
【作者】小林一茶
【季語 / 季節】蛙 / 春
【補足】この句は、武蔵の国の竹ノ塚(現在の東京都足立区)でつくられたといわれています。
やれ打つな はえが手をする 足をする
【意味】やれ、打ち(=叩き)なさるな。蠅が手をすり、足をすっている(から)
【作者】小林一茶
【季語 / 季節】はえ / 夏
【補足】蠅のしぐさを命乞いする姿に見立てた句です。
夕立や 草葉をつかむ むら雀
【意味】夕立… 草の葉をつかむ雀たち…
【作者】与謝蕪村
【季語 / 季節】夕立 / 夏 (「むら雀」は春)
【補足】「むら雀」とは、雀の群れのことをいいます。
雪とけて 村一ぱいの 子どもかな
【意味】雪が解けて、村いっぱいの(遊んでいる)子供たち…
【作者】小林一茶
【季語 / 季節】雪とけて / 春
【補足】この句は、文化11年(1814年)の早春に詠まれたものです。
をととひの へちまの水も 取らざりき
【意味】おとといの糸瓜の水も取らなかった…
【作者】正岡子規
【季語 / 季節】へちま / 秋
【補足】子規の辞世の句といわれています。
【関連ページ】 正岡子規の代表作
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