11月の季語 30の【一覧】と例句
11月になると秋も一段と深まり、少しずつ冬の気配も感じられてきます。
日が暮れ始めたかと思っていると、あっという間に暗くなってしまうような秋の夕方には、何とも言いようのない寂しさを感じずにはいられません。そして、季節は少しずつ寒さの厳しい冬へと移り変わっていきます。
このページには、そのような季節感に満ちた「11月の季語」といえるものを集めました。11月ならではのものばかりですので、是非チェックしてみて下さい。
目次
- 1 11月の季語と例句
- 1.1 お火焚 / おひたき
- 1.2 落葉
- 1.3 返り花
- 1.4 柿落葉
- 1.5 風除 / かざよけ
- 1.6 口切 / くちきり
- 1.7 熊手 / くまで
- 1.8 凩 / こがらし
- 1.9 小春 / こはる
- 1.10 山茶花 / さざんか
- 1.11 七五三
- 1.12 十一月
- 1.13 十夜 / じゅうや
- 1.14 小雪 / しょうせつ
- 1.15 酉の市 / とりのいち
- 1.16 新嘗祭 / にいなめさい、しんじょうさい
- 1.17 二の酉
- 1.18 初氷
- 1.19 初時雨 / はつしぐれ
- 1.20 初霜
- 1.21 初冬 / はつふゆ
- 1.22 初雪
- 1.23 枇杷の花 / びわのはな
- 1.24 冬構え / ふゆがまえ
- 1.25 冬めく
- 1.26 紅葉 / もみじ、こうよう
- 1.27 紅葉散る
- 1.28 八手 / やつで
- 1.29 立冬 / りっとう
- 1.30 炉開き / ろびらき
11月の季語と例句
私たちが使っている現代の暦(新暦)の 11月にみられる風物で俳句の季語となっているものを集め、言葉の文字の五十音順に並べました。
また、それぞれの季語が詠まれた俳句を【例句】として挙げました。
なお、俳句の季語の季節感は旧暦によるものであり、ここに集めた季語は「紅葉(秋の季語)」を除き「冬」のものです。
お火焚 / おひたき
【例句】お火焚に 逆立つ狐 灯りけり
【作者】阿波野青畝(あわの せいほ)
【補足】お火焚きは神事(しんじ=まつりごと)で、京都を中心に行なわれてきました。「御火焚」「御火焼」という漢字で表記されることもあります。
落葉
【例句】落葉降る 大木に身を よせにけり
【作者】星野立子(ほしの たつこ)
【関連】 落ち葉の俳句
返り花
【例句】返り花 満ちてあはれや 山ざくら
【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)
【補足】「帰り花」と書き表されることもあります。11月頃の暖かくて穏やかな日に、本来の季節とは異なって花が咲くことを意味します。「忘れ花」「二度咲」「狂い咲」なども同じ意味の言葉です。
柿落葉
【例句】庭木戸を 出て柿落葉 踏みてゆく
【作者】星野立子
【補足】柿に関する季語は数が多く、よく用いられるものは次のようなものです。
(季節) | 季語 |
夏 | 柿若葉 柿の花 青柿 |
秋 | 柿 柿紅葉 |
冬 | 柿落葉 |
風除 / かざよけ
【例句】風除や くぐりにさがる おもり石
【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)
【補足】風除とは、北風を防ぐための垣根(かきね)や塀などのことをいいます。
口切 / くちきり
【例句】口切や 南天の実の 赤き頃
【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)
【補足】口切とは茶道の行事で、初夏に摘んだ新茶を入れて保管していた茶壺の封を切ることです。
熊手 / くまで
【例句】派手やかに 〆て熊手の 売れにけり
【作者】高橋淡路女(たかはし あわじじょ)
【補足】熊手は酉の市(とりのいち)で売られる縁起物です。「〆て」の読み方は「しめて」です。
凩 / こがらし
【例句】凩や 海に夕日を 吹き落す
【作者】夏目漱石
【補足】「凩」は「木枯らし」と表記されることもあります。
【関連】 木枯し(凩)の俳句
小春 / こはる
【例句】あまた出て 小春を崩す 雲ならず
【作者】皆吉爽雨(みなよし そうう)
【補足】小春とは旧暦の10月のことで、小六月(ころくがつ)ともいいます。小春日和(こはるびより)とは、暖かくて穏やかな天候のことをいいますが、春先ではなく、晩秋から初冬にかけての時期に使う言葉です。
山茶花 / さざんか
【例句】山茶花や 古き障子の 中硝子
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
【補足】「障子」「中硝子」の読み方は、それぞれ「しょうじ」「なかガラス」です。
【関連】 山茶花の俳句
七五三
【例句】行きずりの よそのよき子の 七五三
【作者】富安風生(とみやす ふうせい)
【関連】 七五三の俳句
十一月
【例句】今日よりは 十一月の 旅日記
【作者】星野立子
十夜 / じゅうや
【例句】とぎすます 月に雲ひく 十夜かな
【作者】原 石鼎(はら せきてい)
【補足】十夜とは、浄土宗の寺院で行われる「十日十夜法要」のことです。かつては旧暦の 10月5日の夜~15日の朝までの 10日間にわたって行われていました。
小雪 / しょうせつ
【例句】小雪の 朱を極めたる 実南天
【作者】富安風生
【補足】小雪は二十四節気の一つです。
【関連】 小雪とは?
酉の市 / とりのいち
【例句】酉の市 はやくも霜の 下りにけり
【作者】久保田万太郎
【補足】酉の市は 11月の酉の日に行なわれるお祭りで、「お酉さま」「大酉祭(おおとりまつり)」「酉の祭(まち)」などの呼び名もあります。
新嘗祭 / にいなめさい、しんじょうさい
【例句】籾すりの 新嘗祭を 知らぬかな
【作者】正岡子規(まさおか しき)
【補足】新嘗祭は宮中で行われる祭祀(さいし)です
二の酉
【例句】二の酉も とんと忘れて 夜に入りし
【作者】星野立子
【補足】二の酉とは、11月の2回目の酉の日のことです。年によっては「三の酉」まであり、「三の酉まである年は火事が多い」ということが言われます。
初氷
【例句】初氷 はりぬと雀 默しゐる
【作者】水原秋桜子
初時雨 / はつしぐれ
【例句】初時雨 人なつかしく 待ちにけり
【作者】星野立子
【補足】時雨とは、秋から冬にかけての時期の、一時的に降ったり止んだりする雨のことをいいます。
初霜
【例句】初霜や わづらふ鶴を 遠く見る
【作者】与謝蕪村(よさ ぶそん)
初冬 / はつふゆ
【例句】初冬や 手ざはり寒き 皮表紙
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【関連】 初冬の俳句
初雪
【例句】初雪の たちまち松に つもりけり
【作者】日野草城
【関連】 初雪の俳句
枇杷の花 / びわのはな
【例句】実を底に 持ちてたのもし 枇杷の花
【作者】上島鬼貫(うえじま おにつら)
冬構え / ふゆがまえ
【例句】門閉じぬ 客なき寺の 冬構
【作者】夏目漱石
【補足】冬構えとは、冬に向けて準備をすることをいいます。
冬めく
【例句】争ひて 路ゆく人の 冬めきし
【作者】長谷川かな女
紅葉 / もみじ、こうよう
【季語の季節】秋
【例句】ちる紅葉 ちらぬ紅葉は まだ青し
【作者】正岡子規
【補足】「紅葉」は秋の季語で、次の項目の「紅葉散る」は冬の季語です。
紅葉散る
【例句】山深し 樫の葉落ちる 紅葉散る
【作者】正岡子規
八手 / やつで
【例句】さかんなる 八ツ手の花の うすみどり
【作者】星野立子
立冬 / りっとう
【例句】立冬や 手紙を書けば 手紙来る
【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)
【補足】俳句では「冬立つ」「冬に入る」「冬来る」などとも詠まれます。また、立冬は二十四節気の一つです。
炉開き / ろびらき
【例句】炉開や あつらへ通り 夜の雨
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【補足】炉開きとは、冬になって初めて炉を使うことをいいます。かつては、旧暦 10月の1日か「亥の日」を選んで囲炉裏や炬燵に火を入れました。
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