6月の俳句 20選 【有名俳人の名作から厳選】
6月と言われて思い浮かぶものはいろいろありますが、やはり「梅雨」が挙げられるのではないでしょうか。
それに関連して、雨に濡れた紫陽花の花といったイメージの強いのが 6月です。長く続く雨には少し憂鬱な気分にさせられるかもしれませんが…
このページは、そのような 6月に特有の情景を表現している「6月の俳句」といえるようなものを集めました。6月ならではの風物が詠まれているこられの俳句を、是非とも鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 6月の俳句について
- 2 6月の俳句 20選
- 2.1 青梅に 手をかけて寝る 蛙哉
- 2.2 紫陽花に 雫あつめて 朝日かな
- 2.3 あぢさゐを 五器に盛ばや 草枕
- 2.4 雨蛙 啼くや一面 桑畠
- 2.5 美しき黴や 月さしゐたりけり
- 2.6 大寺の うしろ明るき 梅雨入かな
- 2.7 欅越し ひかりつづける 六月野
- 2.8 心澄めば 怒濤ぞ聞こゆ 夏至の雨
- 2.9 梅雨さむし 鬼の焦げたる 鬼瓦
- 2.10 梅雨寒の 昼風呂ながき 夫人かな
- 2.11 梅雨の坂 人なきときは 水流る
- 2.12 梅雨の月 大きくあかき星連れて
- 2.13 梅雨晴の 夕茜して すぐ消えし
- 2.14 花柘榴 雨きらきらと 地を濡らさず
- 2.15 葉の裏に ひぐれの暗さ かたつむり
- 2.16 山風に あらはれ見ゆる 桜んぼ
- 2.17 夕晴の 雲や黄色に 瓜の花
- 2.18 六月や かぜのまにまに 市の音
- 2.19 六月や 白雲 色を磨ぎすまし
- 2.20 わがもいで 愛づる初枇杷 葉敷けり
6月の俳句について
現代の暦(新暦)の 6月の風物などが詠み込まれている句を集めました。
俳句の季語の季節感は旧暦によるものであり、ここに集めた句の季語は「夏」のものです。
6月の俳句 20選
青梅に 手をかけて寝る 蛙哉
【季語】青梅
【作者】小林一茶(こばやし いっさ)
【補足】 梅雨(つゆ)の頃に実を結んだ青梅(あおうめ)は、古くから多くの俳句に詠まれてきました。
【関連】 蛙の俳句
紫陽花に 雫あつめて 朝日かな
【季語】紫陽花
【作者】加賀千代女(かがのちよじょ)
【補足】梅雨を代表する花である紫陽花(あじさい)には、青、紫、ピンク色、白などの色のものがあります。また、色が変化することから「七変化(しちへんげ)」、「八仙花(はっせんか)」と呼ばれることもあります。「雫」の読み方は「しずく」です。
【関連】 紫陽花の俳句
あぢさゐを 五器に盛ばや 草枕
【季語】あぢさゐ
【作者】服部嵐雪(はっとり らんせつ)
【補足】五器(ごき=御器)とは、食べ物を入れる器のことで、特に蓋(ふた)がついたものをいいます。「盛らばや」は「盛りたい」という意味で、願望を表しています。
雨蛙 啼くや一面 桑畠
【季語】雨蛙
【作者】野村喜舟(のむら きしゅう)
【関連】 雨蛙の俳句
【補足】「啼く」の読み方は「なく」です。
美しき黴や 月さしゐたりけり
【季語】黴
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
【補足】黴の読み方は「かび」です。
大寺の うしろ明るき 梅雨入かな
【季語】梅雨
【作者】前田普羅(まえだ ふら)
【補足】梅雨(つゆ)の語源に関しては、次のように幾つかの説があります。
- 梅雨には黴が発生しやすいことから「黴雨(ばいう)」と呼ばれていて、同じ読みの「梅」の字が使われるようになった
- 梅雨の時期に梅の実が熟すから
- 梅雨には毎日のように雨が降るので、「梅」の字が使われるようになった
【関連】 梅雨の俳句
欅越し ひかりつづける 六月野
【季語】六月
【作者】大野林火(おおの りんか)
【補足】欅の読み方は「けやき」です。
心澄めば 怒濤ぞ聞こゆ 夏至の雨
【季語】夏至
【作者】臼田亜浪(うすだ あろう)
【補足】怒濤(どとう)とは、激しく荒れ狂う大波のことをいいます。夏至(げし)は二十四節気の一つです。
【参考】 夏至はいつ?
【関連】 夏至の俳句
梅雨さむし 鬼の焦げたる 鬼瓦
【季語】梅雨
【作者】加藤楸邨
【補足】鬼瓦(おにがわら)は屋根の棟(むね=最も高い部分)の端に置く大きな瓦で、鬼の顔をしたものや雲の形のものなどがあります。
梅雨寒の 昼風呂ながき 夫人かな
【季語】梅雨寒
【作者】日野草城(ひの そうじょう)
【補足】梅雨寒(つゆさむ)とは、梅雨の頃の寒さをいいます。
梅雨の坂 人なきときは 水流る
【季語】梅雨
【作者】西東三鬼(さいとう さんき)
梅雨の月 大きくあかき星連れて
【季語】梅雨
【作者】及川 貞(おいかわ てい)
【補足】「あかき」は「明るい」という意味です。
梅雨晴の 夕茜して すぐ消えし
【季語】梅雨晴れ
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】梅雨晴れとは、梅雨の時期の晴れ間のことをいいます。夕茜(ゆうあかね)は、「夕映え(ゆうばえ)」と同義と解します。
花柘榴 雨きらきらと 地を濡らさず
【季語】花柘榴
【作者】大野林火
【補足】花柘榴(はなざくろ)とは、鑑賞用で実がならないものをいいます。これに対して、食用とするものは実柘榴(みざくろ)と呼ばれます。
葉の裏に ひぐれの暗さ かたつむり
【季語】かたつむり
【作者】加藤楸邨
【補足】かたつむりは「蝸牛」、「かたつぶり」、「ででむし」などとも詠まれます。
山風に あらはれ見ゆる 桜んぼ
【季語】桜んぼ
【作者】原 石鼎(はら せきてい)
夕晴の 雲や黄色に 瓜の花
【季語】瓜の花
【作者】各務支考(かがみ しこう)
【補足】瓜(うり)は、ウリ科の果菜類の総称です。
六月や かぜのまにまに 市の音
【季語】六月
【作者】石田波郷(いしだ はきょう)
【補足】「まにまに(随に)」 は「~にまかせて、~のままに」という意味で、他の意志や物事の成り行きに従う様を表現する言葉です。「市」の読み方は「まち、いち」です。
六月や 白雲 色を磨ぎすまし
【季語】六月
【作者】原 石鼎
【補足】「磨ぎすまし」の読み方は「とぎすまし」
わがもいで 愛づる初枇杷 葉敷けり
【季語】枇杷
【作者】杉田久女(すぎた ひさじょ)
【補足】「愛づる(めずる)」は、「心がひかれる、感じ入る、愛する、かわいがる」という意味です。久女は次の句も詠んでいます。
わがもいで 贈る初枇杷 葉敷けり
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