年賀の俳句 50選 -ねんが- 【有名俳人の名作から厳選】
年があらたまって、年始の挨拶回りで年賀を伝えるのは清々しくて楽しいものです。
この「年賀」は俳句において新年の季語でもあり、多くの作品に詠み込まれてきました。
このページには、年賀が詠まれた俳句を多く集めました。お正月特有の雰囲気に満ちた作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。
目次
- 1 年賀の俳句 50選
- 1.1 打ちつれて 夜の年賀や 婿娘
- 1.2 遠方の 年賀残りて 今日も雪
- 1.3 扇屋の 女中頭の 年賀かな
- 1.4 各々の 年を取りたる 年賀かな
- 1.5 外来の 吾にキャディが 年賀言ふ
- 1.6 風邪の子を 残して年賀 挨拶に
- 1.7 風邪ひきの 遅き年賀の 落ちあふも
- 1.8 旧藩主へ 年賀のほとり ひそけかりし
- 1.9 金屏に 銀髪これぞ 年賀なる
- 1.10 犬猿の 仲の二人の 年賀客
- 1.11 玄関の 梟の額に まづ年賀
- 1.12 子等残し 来て日暮れたる 年賀かな
- 1.13 三ヶ日 わざとよけたる 年賀かな
- 1.14 師の許が 唯一の年賀 坂を越ゆ
- 1.15 白鷺の 舞ひ降りて来し 年賀かな
- 1.16 深大寺 蕎麦を啜りて 年賀かな
- 1.17 するめまた 焼き足す夜の 年賀客
- 1.18 精神科 年賀云ふもの 云はぬもの
- 1.19 石油ストーブ つぶやく隙や 年賀述ぶ
- 1.20 先生の 墓に年賀を 申しけり
- 1.21 禅寺や 年賀の魚板 鳴るぞ佳き
- 1.22 端正に 年賀うけつゝ 老母かな
- 1.23 直言も 残して若き 年賀客
- 1.24 次の間に 碁の用意ある 年賀かな
- 1.25 天皇の 年賀いつもの 右手あげ
- 1.26 棟梁の 青髯匂ふ 年賀かな
- 1.27 年賀言ふ 人のうしろを 掃いてゐる
- 1.28 年賀受け 年賀状受け 籠りをり
- 1.29 年賀書き 終へて再び 筆不精
- 1.30 年賀客 謡の中へ 通しけり
- 1.31 年賀して すぐ猟犬と 山に入る
- 1.32 年賀の座 日向ぼこりを 賜りし
- 1.33 年賀のぶ 心控え目 なることも
- 1.34 年賀の雪 降りきてかゝる 吾が眼鏡
- 1.35 年賀やめて 小さくなりて 籠りをり
- 1.36 年賀用 生菓子鶴亀 しっとりと
- 1.37 年賀より まづ他のこと 申しけり
- 1.38 畑をめぐりて 菊枯るゝ戸に 年賀かな
- 1.39 ハンセン氏病の島より 年賀来し
- 1.40 久々に はるばるに来て 年賀かな
- 1.41 鵯の 喋々しかる 年賀かな
- 1.42 深川の たかばしとほき 年賀かな
- 1.43 不精にて 年賀を略す 他意あらず
- 1.44 赴任地は 異国と告げし 子の年賀
- 1.45 ふるさとの 子等に銭やる 年賀かな
- 1.46 星月夜 鎌倉山に 年賀客
- 1.47 廻り道 して富士を見る 年賀かな
- 1.48 明神の あまざけ下げて 年賀かな
- 1.49 髻を 女房に結はせ 年賀かな
- 1.50 例の如く 草田男年賀 二日夜
年賀の俳句 50選
年賀が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。
どうぞ、ごゆっくりとご鑑賞下さい。
打ちつれて 夜の年賀や 婿娘
【作者】内藤鳴雪(ないとう めいせつ)
【補足】「婿」の読み方は「むこ」です。
遠方の 年賀残りて 今日も雪
【作者】渡辺水巴(わたなべ すいは)
扇屋の 女中頭の 年賀かな
【作者】岸田稚魚(きしだ ちぎょ)
【補足】女中頭(じょちゅうがしら)は、女中の中で最も上の立場の者です。
各々の 年を取りたる 年賀かな
【作者】高浜虚子(たかはま きょし)
【補足】「各々」の読み方は「おのおの」です。
外来の 吾にキャディが 年賀言ふ
【作者】山口誓子(やまぐち せいし)
風邪の子を 残して年賀 挨拶に
【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)
風邪ひきの 遅き年賀の 落ちあふも
【作者】篠田悌二郎(しのだ ていじろう)
旧藩主へ 年賀のほとり ひそけかりし
【作者】中村草田男(なかむら くさたお)
【補足】「ひそけし(窃けし)」は物寂しい様子を表現する形容詞です。
金屏に 銀髪これぞ 年賀なる
【作者】林 翔(はやし しょう)
【補足】金屏(きんべい、きんびょう)とは、金の屏風(びょうぶ)のことです。
犬猿の 仲の二人の 年賀客
【作者】鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)
【補足】「犬猿(けんえん)」は、仲が悪いことのたとえです。
玄関の 梟の額に まづ年賀
【作者】加藤楸邨(かとう しゅうそん)
【補足】「梟」の読み方は「ふくろう」です。
子等残し 来て日暮れたる 年賀かな
【作者】杉田久女(すぎた ひさじょ)
三ヶ日 わざとよけたる 年賀かな
【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)
師の許が 唯一の年賀 坂を越ゆ
【作者】松崎鉄之介(まつざき てつのすけ)
【補足】「許」の読み方は「もと」です。
白鷺の 舞ひ降りて来し 年賀かな
【作者】稲畑汀子
深大寺 蕎麦を啜りて 年賀かな
【作者】星野麥丘人(ほしの ばくきゅうじん)
【補足】深大寺(じんだいじ)は、東京・調布(ちょうふ)にある仏教寺院です。
するめまた 焼き足す夜の 年賀客
【作者】鷹羽狩行
精神科 年賀云ふもの 云はぬもの
【作者】平畑静塔(ひらはら せいとう)
石油ストーブ つぶやく隙や 年賀述ぶ
【作者】角川源義(かどかわ げんよし)
先生の 墓に年賀を 申しけり
【作者】成瀬正俊(なるせ まさとし)
禅寺や 年賀の魚板 鳴るぞ佳き
【作者】殿村菟絲子(とのむら としこ)
【補足】魚板(ぎょばん)とは、木を魚の形に彫って作った板のことで、寺院でこれを打って、様々な合図をします。
端正に 年賀うけつゝ 老母かな
【作者】小沢碧童(おざわ へきどう)
直言も 残して若き 年賀客
【作者】能村登四郎(のむら としろう)
【補足】直言(ちょくげん)とは、自分が信じることを遠慮なく言うことです。
次の間に 碁の用意ある 年賀かな
【作者】竹本白飛(たけもと はくひ)
天皇の 年賀いつもの 右手あげ
【作者】鷹羽狩行
棟梁の 青髯匂ふ 年賀かな
【作者】村山故郷(むらやま こきょう)
【補足】棟梁(とうりょう)とは、大工の親方のことで、頭(かしら)となる人のことも意味します。
年賀言ふ 人のうしろを 掃いてゐる
【作者】加倉井秋を(かくらい あきを)
年賀受け 年賀状受け 籠りをり
【作者】松本たかし(まつもと たかし)
年賀書き 終へて再び 筆不精
【作者】稲畑汀子
【補足】筆不精(ふでぶしょう)とは、面倒がって、必要な書簡でさえも書こうとしないことをいいます。
年賀客 謡の中へ 通しけり
【作者】野村喜舟(のむら きしゅう)
【補足】謡(うたい)とは、能楽に合わせてうたう「うたいもの(=謡曲;ようきょく)」のことです。
年賀して すぐ猟犬と 山に入る
【作者】百合山羽公(ゆりやま うこう)
年賀の座 日向ぼこりを 賜りし
【作者】岸田稚魚
【補足】「日向(ひなた)ぼこり」とは、日向で日光に当たって暖まることで、「日向ぼっこ」と同じです。「賜りし」の読み方は「たまわりし」です。
年賀のぶ 心控え目 なることも
【作者】稲畑汀子
年賀の雪 降りきてかゝる 吾が眼鏡
【作者】藤後左右(とうご さゆう)
【補足】「眼鏡」の読み方は「めがね」です。
年賀やめて 小さくなりて 籠りをり
【作者】加藤楸邨
年賀用 生菓子鶴亀 しっとりと
【作者】高澤良一(たかざわ よしかず)
【補足】生菓子(なまがし)とは、主に「餡(あん)類」を使った蒸し菓子のことです。
年賀より まづ他のこと 申しけり
【作者】今井千鶴子(いまい ちづこ)
畑をめぐりて 菊枯るゝ戸に 年賀かな
【作者】大谷光演(おおたに こうえん)
ハンセン氏病の島より 年賀来し
【作者】平畑静塔
【補足】ハンセン氏病(=ハンセン病)とは、癩病(らいびょう:癩菌による感染症)のことです。
久々に はるばるに来て 年賀かな
【作者】広江八重桜(ひろえや えざくら)
鵯の 喋々しかる 年賀かな
【作者】相生垣瓜人(あいおいがき かじん)
【補足】「鵯」の読み方は「ひよどり」です。
深川の たかばしとほき 年賀かな
【作者】久保田万太郎
【補足】深川(ふかがわ)は東京の地名です。
不精にて 年賀を略す 他意あらず
【作者】高浜虚子
赴任地は 異国と告げし 子の年賀
【作者】山田弘子(やまだ ひろこ)
ふるさとの 子等に銭やる 年賀かな
【作者】吉武月二郎(よしたけ つきじろう)
星月夜 鎌倉山に 年賀客
【作者】高浜虚子
【補足】「星月夜(ほしづきよ:月がなく、星が輝いて明るい夜)」は「鎌倉」に掛かる枕詞(まくらことば)です。
廻り道 して富士を見る 年賀かな
【作者】五所平之助(ごしょ へいのすけ)
明神の あまざけ下げて 年賀かな
【作者】久保田万太郎
【補足】明神(みょうじん)とは、威厳と徳のある神のことです。
髻を 女房に結はせ 年賀かな
【作者】村上鬼城(むらかみ きじょう)
【補足】髻(もとどり)とは、髪の毛を頭の上に束ねた所のことで、「たぶさ」ともいいます。
例の如く 草田男年賀 二日夜
【作者】高浜虚子
【補足】中村草田男(なかむら くさたお)は、明治後期から昭和後期にかけての俳人で、高浜虚子に師事しました。
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